記
母よ
すっかりと窶れた人よ
筋肉も脂肪も落ちた手足を包む
皺皺に縮んでしまった皮よ
浮き出た鎖骨や肋の守る
肺や臓腑は動いているが
心体の消耗を隠しきれない
まるで煤けた燃え殻だ
やりたいことがなにもない
長くは生きたくないと呟く
健康を願う子にそれを言うのか
わたしはひとりぼっちだと零す
では側にいる子はなんなのか
どうか嘆かないでほしい
労苦ばかりの生であっても
己に絶望しないでほしい
たましいの輪廻は長くかかるが
肉体はたったの数ヶ月である
何度でもすぐに生まれ変われる
老いとして現れている変化は生き様
懸命に歩みを進めた証拠だ
あなたという歴史のみちゆき
刻んだ時を示すのだから
その白髪や皺のひとつひとつを
慈しみ誇ってほしいのだ
母よ
時間薬と言うだろう
残酷なのかもしれないが
自分を生きてほしいのだ
母よ
わたしはあなたを愛している
201219
第100回 詩コン『記』
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