近
浜辺を愛撫する波のように何度も触れて
あなたを知ってきたつもりでいました
澄んで滑らかな水には岩をも削る力があること
多くの恵みをもたらすことを固く信じてきましたが
まったくのひとりよがりだと気がつきました
身勝手で一方的な妄想でした
あなたを楽器のように考えていたのかもしれません
調弦をして都合よく奏でたかったのかもしれません
いつから歪んでしまったのでしょう
あなたなら指摘ができるでしょうか
波は次第に浜辺を削いで深みへ誘い込んでゆきます
近似値を探すわたしは溺れてゆきます
たとえディペンドだったとしても
そこにアペンドがあったとしても
目蓋を閉じてもなお残るあなたという光景は
誓って余さず忘れません
わたしは炉の色に身を焦がしては死にゆきます
あなたのそばに生まれ出るため
新しい日を重ねるために
200708
第78回 詩コン『近』
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