第4話 箱 ②

「整列!」

 確か須賀川すかがわとか言った禿げたおっさんが、戦闘用メットを小脇に抱えて声を張った。フレームから奇妙に浮き出た眼鏡のレンズ部分がキラリ、と光る。

 ついでに、額の汗と地肌剥き出しの頭も夏の太陽の恵みを一身に集める様に光っていた。

 研修の最後に渡された組織図通り、10人一組で10チームが、チームナンバー順に整列する。俺は№8。残念ながら船曳七穂チームではない。ウチのコマンドリーダーは、土海俊之と言う、中途半端な角刈りをした小太りの男だった。常にマスクをしていて口元が隠れているせいで、はっきりは分からないが、いいとこ20代後半から30前半。丸い顔に、丸い目が、どこか少年を思わせる。いつも、大きくて丸っこい体を縮こませる様にしているところを見ると、気は体程大きくはないようだ。

 3人づつ三列に整列し、それが9チーム。

 それぞれ9人のコマンドを率いるコマンドリーダーが各チームの一歩前に立つ。

 10人で1チームだ。

 9人のコマンドリーダー中5人が女性で、残りは男。

 どういう経緯で選ばれた、あるいは、志願したのか、めちゃめちゃ美人が多い。

 コマンドリーダーだけじゃない。

 総勢100人の13部隊中、半分強が女性だが、従業員を顔で選んでると評判のカフェや化粧品売り場並のラインナップだった。

 今までのバイトや、派遣では考えられない。

 整列したチーム3チームごとに3人のユニットリーダーが人数確認の報告を受けて、正面に向き直った。

 一人は禿頭の須賀川。

 もう一人はショートカットで気の強い目尻をした大きな瞳と、驚異的なウエストの細さを見せる永水愛羽ながみずあいは

 最後の一人が、ガタイが良くて浅黒い肌をした、如何にも軍人と言った風情の新白河しんしらかわなんちゃら言う短い角刈りの男。

 ユニットリーダーが向き直ると、正面に居た緩い感じの5人組が内輪話を止めて、足を揃えた。5人の後方にモデルかアイドル(しかもピンでやれるかセンター確実の)としか思えない2人が控えている。

「13部隊整列完了しました!」

 3人いるユニットリーダーの真ん中に立つ須賀川が、肘を水平にして敬礼した。

 左右の永水、新白河も同様に敬礼する。

 敬礼を受けた5人組は、右手を軽く額に当ててすぐに下ろした。

 5人の内、真ん中に立つのが杉堂すぎどうとか言うPL《プロジェクトリーダー》。その左右に2人づついるのが、SV《スーパーバイザー》達。

 つまり、コマンドリーダーとコマンド合わせて90人を管理する管理者層が、UL《ユニットリーダー》、ULの上にSV、そして部隊を率いる最高責任者がPLということになる。

 PL、SV達の後ろにいる美少女は、何の訳かは忘れたがSDSと呼ばれる管理者の補佐役の2人だ。

 合わせて100名。

「それでは、箱に入る前に皆さんに少しお話します」

 先行する部隊が次々箱に飲み込まれていくのを横目に見つつ、PLが話し始めるのを聞くことにした。

 

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