作戦行動開始まで


 翌日にはラトオリに設置された対策室本部にてクロノたちの報告が受領され、すぐさま作戦会議が開かれた。

 指揮を執るのは一時的に編成された〈地脈の龍〉対策部隊だ。


 叩き台として提案された作戦はこうだ。

 アリスを筆頭にラトオリ陣営が中心となってパーティを組み第一陣としてカリストのアジトを包囲する。

 そしてウェスナ陣営はそれをさらに取り囲むように周辺に布陣し、危険な状況に陥ったときに素早く周辺住民の避難誘導を行えるように待機しておく。


 しかしこれにはウェスナ側からの反発もあった。

 カリストが潜んでいるのはウェスナであり、指揮を執るのはウェスナアドミニスタであるべきだと声が割り込んだ。

 だが彼らは〈地脈の龍〉の使用経験もなくその恐ろしさがわかってないという理由から、結局はアリスの説得もあり当初の案が通り、ウェスナ陣営は苦虫を噛むこととなった。

 ウェスナのアドミニスタではカリストの持つ〈地脈の龍〉が起動されたときに対処しきれない。誰も明確に言葉にはしなかったものの、暗にそう宣言されているようなものだった。


 作戦は、ラトオリ陣営が到着するのを待ってからの開始となる。

 その人数、〈地脈の龍〉の使用経験があり、特性を熟知しているギルド長アリスを含め、十五名。

 これが、クロノのスキルで隠れた複数名が包囲し奇襲をかけた上で、万が一起動した〈地脈の龍〉に対処でき、且つカリストが移動する前に集まれる数だと判断された。

 一度に街に潜入すれば感づかれることを考慮して、来る十五名は二日に分けてウェスナに潜入する。


 ここまで慎重を期すにも理由がある。ウェスナアドミニスタで唯一クロノと同じような潜伏スキルが使えるメンバーがカリスト一味の見張り役を監視していた間、ある事実が明らかになった。どうやらカリスト一味には、外部に協力者がいるらしいことがわかったのだ。そしてそこでは、様々なアイテムの授受、横流しも確認された。

 悪党たちの組織的な結託が匂わされる、嫌な一幕だったそうだ。


「この作戦をもって、奴らを必ず捕まえる。あなたたち、アドミニスタリーグとして根性を見せなさい」


 アリスの鼓舞に雄叫びをもって応える豪傑たち。

 ちなみにこの作戦の全体の動きを本部に立案したのはクロノだ。

 彼によって整然と並べられた情報と、それを元に組み上げられる細かい作戦行動の描写はアドミニスタの面々を唸らせ全面的に肯定されたらしい。

 大きな修正案が上げられることもなく、時間ぎりぎりまで細部を詰める作業に移行することとなった。

 

よって、決行日時は少なくとも二日後――つまり、その間ヒメリは。



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