恥を捨てろ!命を大事に!!!!

 何かに似てるな…これ。


 あ!痴漢だ!


 学生時代、痴漢被害にあった事を思い出した。

 あんな、人がギュウギュウ詰めの場所で卑猥な事されたら、流石にやめてって言うだろ。誰か気付くだろ。

 しかし、そうでは無かった。

 恐怖で全身が強ばる。

 気付く人もいても見て見ぬふり。


 アレ、怖かったぁー。


 それを思えば、今は大丈夫。

 ファミレスで出来ることは限られてる。


 しかも、オフ会の時はもちろん偽名である。自宅も話してないし、年齢はサバ読んだしな…。

 うーん、しかし無理に出ようとしても退路がない。テーブルを飛び越える…?いやぁ、流石に食べ物ありすぎでしょ…。

 いっぱいオーダーした自分をひっぱたきたい!


 2人の目はギラギラしてて、今にも襲われそう。


 でも、どうだ?


 正直に言う。


 Mさんの方がギラギラしてたぞ?

 大学生君を連れ込む時のMさんほど、この2人は必死か?

 これは作られた狂気。

 Mさんの真性の狂喜。


 Mさん、ありがとう……私、無事に帰れるわ。

 最初から気付いてればなぁ…。


 ちょっと仕事の苦労話とか聞きたかったなぁ。陥落しない人を頑張って契約させた話とかな。

 でも、2人組だし、もうかなり苛立っているようだ。


「クーリングオフってできるんです?」

「できるよ勿論」


 嘘つけ!


 取り敢えずバッグから大量の薬をわざと広げる。

 ひょいひょいと口に放り込む。

 実際には5mm錠飲むところを、1mm錠を5錠飲む。微調整ようにこのような処方になっていた。


「この薬、すんげぇいいっすよぉ」


 ヘラヘラしてみる。

 あ、ちょっと引いてる。


「うわっ、そうなんだ……。

 でさ!契約料も今回無料だからー」


 ダメかぁ、そりゃまぁ、こいつらこれで食ってるんだもんな。


 なら、奥の手だ。

 どっちが手強い?


 ふふん!

 もちろん、コイツらより、街頭演説の市長の方が怖いぜ!

 いくら文句言っても、『応援、ありがとうございます!』だからな。



 通路挟んで向かいのボックス席にウェイターがオーダーを取りに来た。

 今だ!!


 バッと立ち上がり、両手をバンザイ!!


「助けて下さい!警察を呼んでください!恐喝されています!」


「!!」


 キノコ君がガッシリと腕を掴み、座席へ私を押し込もうとする。

 馬鹿め!逆効果だ!


「悪徳商法です!通報お願いします!助けて下さい!お願いします!誰かー誰かー!!」


 みんな見ている。

 ウェイターが消えていった。

 みんな迷惑そうな顔をしている。

 すまん、ちょっと気でも違った様な私を見ててくれ。


 2人が慌てて書類を畳んだ頃、店長がやって来た!


「お客様、こちらへ」


 連行。


 しかし、メロンさんはキノコ君を席から引っ張り出し、慌てて会計する。

 店内、全員が見る。


『あれが悪徳業者かぁ』


 2人は逃げるようにして去っていった。

 まともに働け!


 一方私は……。


「お客様、店内での大声は、他の方のご迷惑になりますので…」

「いやいや、そうでもしないとさぁ」

「分かってるけど、駄目!駄目なの!」


 あ、店長、素で怒ってる。

 ごめんなさい!


 バックヤードに通される。


「とにかく、お客さんが警察呼んじゃったからここで待って!」


 えぇー、私じゃなくて、あの2人を追いかけろよ…。

 と思ったけど、回避できたので感謝。


 細かい事情聴取の後、やっとこ解放された。


「とにかく、知らない人と会ったりするなんて、君も悪いんだよ!今後はよく考えて!

 ほら、店長にも!」


 な、何っ!!?

 お、お巡りさん怖い!


「すっすみませんでした…」


 トホホ………。後日、簡単な菓子折りを持ち店長にお詫び。うぅ。


 しかし、時代、変わったなぁ…。

 出合い系にしても、今より安全だったのになぁ。


 あ、これもうさぎくんには内緒にしとかなきゃ…。


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