終章
青い青い空は、どこまでも続く。
その先のどこかに、いつか会ったあの人たちが居たのだろうかと、時折、想いを馳せていた。
「ねーアズロ、みんな来たー?」
台所から声がかかって、恐る恐る振り返る。
「シュナ、まさか料理全部に強いお酒入れた……?」
──今日は、久しぶりに旧知の仲間と会う予定だった。
王政が廃止され、先進国においてはセレス世界初の民主主義国家となった、セレス国。
軍議会と和解し、各国に先駆けた政治体制を敷いたジェイは、頃合いを見てセレス国の外れの一角に移り住んだ。
かつて、イグニス国があった──今は一面に花畑の広がる、穏やかな農地。
髪が真っ白になり、足腰が弱り始めたと語り始めたジェイはしかし、いまだに健脚で、ここ──とある山奥まで、歩いて来るという。
アクアの神殿を起点とし、セレス各地を旅するルーチェの魔力は衰えることなく、変わったのは本当に寿命だけなのだと、何度も知らされた。
今日は相変わらずの転移でひとっとびしてくるらしい。
体力を消耗すると言いつつ、汗ひとつ見せない彼女のクールさは変わらない。
時折見せる、切なさを除いては。
ヴァルド・セレス両軍の繋ぎ手となり、和平条約に貢献したイシオス……フリューギルは、ヴァルドで幼い王を支えながら各地を平定しているエナの要請を受け、ヴァルド軍師に収まっている。
……が、度々ヴァルドを抜け出しては、とある女性に会いに行っていた。
かつてイシオスの妻の代役を演じてくれていた……アトリスと名乗った諜報の女性の、変化前の姿は──。
それを知ったイシオスは、どんなに足蹴にされても、何度もアタックしているようだ。
ヴァルド王を支えるため、ログレア籍をヴァルド籍に移し、リゲルの案じた幼い王の側近となったエナは、シェーナからあることを託され、時折アーリアに赴いていた。
アーリアとヴァルドは、アーリアやアクア、ログレア全土を襲ったあの戦禍以来協力関係にあり、分断されていた貿易も再開されつつある。
そんな中、エナはひとつの指輪を持って、アーリア王城へ行き来していた。
ヴァルド王側近の立場でないと入れない場所――アーリアの宮殿の一角に住まう、ルーアンの姉妹に会うために。
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