3
***
──いつまで、持つだろうか。
「アズ、ロ……」
まぶしくて、何も見えない。
ただ、自分たちが
「シェーナさ……」
意識が、途切れてしまいそうだ。
力導器機には、まだ余力がある。
もう少し、持ちこたえなければ。
「ごめ……」
シェーナの声が小さくなりかけた、その時。
「──クリシュナ!」
アズロらしからぬアズロの声と腕が、シェーナの身体を支えた。
片腕を直接機体中央に。
もう片腕で、シェーナを支え続ける。
機体の動きは、変わらなかった。
「アズロ……制御が……」
「──うん、大丈夫みたいだ。不思議だよね」
「……そっか」
ささやいたシェーナは、ゆっくりと目蓋を閉じる。
誰かに何かを委ねたのは、いつぶりだろう?
支えは、力強く、あたたかい。
意識を手放すでもなく、心に、白い白い光を思い浮かべた。
シエラねえさんの手から放出されるのを何度も何度も眺め憧れた、あの優しい光を。
リリー……
ああ、そうだ。
あれは、元々、リリーではなくて。
誰もが、持っている光……
形が一定化していて、気付かなかった。
私の中にも、あることに──
「アズロ、ありがとう」
穏やかなシェーナの言葉に、何かが目を覚ました。
シェーナの両手から、異能でもなく古の力でもなくリリーでもない、けれど、全てを含む流れが、生まれていた。
「僕もだよ……ありがとう、シェーナさん」
怖れていたラナンキュラスの力は、暴走せずに均一に流れ、片腕を介してリオの力と同調し増幅させ、機体の流れを保たせてくれている。
もう片腕から伝わる大地の如き雄大さが、空を抱きしめるように、支えてくれているからだ。
「そばにいてくれて、ありがとう──」
二人の声が、重なる。
「──」
言葉にならない言葉が、小さな歌を口ずさんだ。
子守唄に似たそれを、初めて聴いたのは、いつだったか……。
いつしか、穏やかな低音が二人の声にふわりと重なり。
鈴の音の繊細な歌声が、小さく重なり。
遠いあたたかな響きが、そっと重なり。
記憶を辿るようなたどたどしい歌声が、重なり。
珍しく凛とした歌声が、重なり。
朗らかでまっすぐな歌声が、天高く融和する──
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