復讐

@SUM82a1

第1話

嫌だ、死にたく無い。


7年前俺が助けた少女の声だ。

7年前夜、中層区域に近い下層区域で爆発事件が起こった。小隊で出動し救助活動を始め、燃えている家屋の瓦礫の中で倒れていた彼女を俺が見つけて助け出した。

腕や脚が切り傷だらけで腹部から胸の下辺りまで火傷の跡が酷く、重体だった。意識は朦朧としていたがまだ息はあった。

彼女を抱き抱えるとうわ言の様に嫌だ、死にたくないと言葉を繰り返していた。

俺は彼女を励ます声をかけ続け、急いで白いテントが並んで設置されている医療班の元まで運び応急処置を頼んだ。

彼女を医療班が持ってきた担架にやさしく乗せて後を任せ、俺はその場を離れ救助活動を続けた。

その後彼女を見つけた付近で両親と思われる人物を瓦礫の中で見つける事が出来たのだが、互いを庇う様に重なり息絶えていた。

瓦礫をどけ遺体を傷つけぬように引き上げ、袋に二人を別々に入れた。

遺体を一時的に置きに行った際、医療班の奴に助け出した少女の容態を聞くと一命はとりとめたと連絡を受けて少し安堵することができた。

その後も救助は続いたが生き残っていた人は彼女以外居なかった。

この件について取材をしにきたメディアが生存者や事件についての詳細を聞いてきた。

俺は隊長という立場もあり、現場に入れないように区切られているテープの所で対応する事になった。マスコミの記者から様々な質問が飛んできたが、生存者についての人数は確定していないとだけ伝えた。救助した彼女に余計な負担が掛からない様にしたかったからだ。事件については現在調査中と言う事で早々に取材を切り上げさせ、現場の後処理に向かった。

現場の処理が終わったのは夜が明けた頃だった。

現場処理が終えた後隊長室に戻り報告書を上げた。少し休憩を取った後彼女の容態が気になり、事件について何か聞けないか聞くついでに様子を見ようと治療している病院へ向かった。病院内で彼女を探していると偶々担当医に話を聞くことが出来、彼女の状態について話を聞いてみた。

現状命に別状はないがまだ意識は戻らないとの事だった。そして怪我は治りはしたものの胴体に大きい傷跡が残ってしまい、女性としては辛い物になってしまうだろうと言われた。

担当医の話を聞いた後彼女の個室に向かった。白く清潔な部屋で看護士が置いたのだろうか、ベッドわきにある棚にミニバスケットに入ったガーベラが置いてあった。そして酸素マスクをつけ、脈などを取っている機械とつながっている彼女を見つけた。悪夢でもみているのかうなされていた。俺は彼女の手を取り大丈夫だ、安心しろと声を掛けながら頭を撫でてやると程なくして落ち着いた。

少しの間だけそのまま様子を見て帰ろうとしたが、離れようとした際に彼女の手に強く握られた。この状態で帰るのは無理だなと思い担当医に許可を取り、その日は彼女の部屋で一泊することになった。


朝ふと手に感触を感じ、目を覚ますと酸素マスクを外し俺の手を頬に当て、目を閉じている彼女が目に入った。

俺はそれを見て意識が戻ったことに安堵した。

俺の視線に気がつき少しの間口を開けて顔を赤くし、震えていたらシーツを頭まで掛け隠れてしまった。

おはようと声をかけるとおはよう御座いますと曇った声が帰ってきた。


「俺はSU、君を救助した人だ。良かったら名前を聞かせてくれないか?」


彼女が顔を赤らめながらシーツから覗かせて結月です、と答えてくれた。頭を撫でながら体調などについて聞くと、大丈夫ですと返事が返ってきた。念の為担当医を呼び、異常がないか検査してもらうことになった。

俺は検査に2,3日かかると言われたので検査が終わったら連絡を貰うことにしてもらい病院を離れた。

その間俺は身寄りが無い結月を受け入れてくれるか知り合いの孤児院の院長のユウに孤児院の子供たちの様子を見るついでに聞いてみることにした。

ユウは俺が極東重工にスカウトされた時に偶々前隊長の伝手で知り合った孤児院の院長だ。今時珍しい教団と一切関係がない孤児院で、女一人で経営していて多くの子供たちからとても慕われている。

前隊長と俺はこの孤児院を支援していて以前から事件で助け出した身寄りのない子供を彼女のもとへ紹介していたので今回も頼む為手土産と一緒に孤児院へ向かった。






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