殺害欲

鈴狐(すずこ)

第1話 僕

 これで何人目だろう。

 

 僕は紅く染まった死体を見る。呆気ないよなぁ人間というのは。


 死体から刺さったナイフを抜き、黒いジャケットの内側にしまい込む。

 

 僕は自分が人とはずれた人間だということに気づいている。


 普通の人間だったら、殺害欲というものはないだろう。

 

 僕には、食欲、睡眠欲、性欲と対等して殺害欲というものが生まれながらに備わっている。


 とりあえず何か生物を殺してしまいたいという欲望。


 その欲望は年々強くなっていき、小さい頃は虫を殺すだけで満足していた身体が、最近は人間を殺さないと満足できない身体になってしまっていた。


 常日頃何かを殺し続けていないとどんどん自分がおかしくなってしまう。


 殺害はやめられない。


 昔、殺害欲が強すぎるあまりに気を失ったこともある。錯乱してプラットフォームから飛び出し、電車に轢かれそうになったこともある。


 だからこの問題に関してはもう割り切るしかなかった。


 殺害は自分自身を守る。

 

 殺害は僕にとっての日常であり、すでに人を殺し続けることの罪悪感はなくなっていた。


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