ランカスターの朝日
乃木ちひろ
プロローグ
Overture
暗い、黒だけが広がる世界に、幾千もの白い粒が浮かぶ。
満開の星が散りばめられた空に包まれると、幅も、奥行きも感じられなければ、上も下もないような感覚になる。
ただ行く先だけを照らす細いライトが、巨大な魔物のような黒い森を浮かび上がらせる。
ここはかつて、人の血が流された場所。大地は血を
エンジンを切ると、静寂の中自分の呼吸音だけがこだまするようだ。
沈黙と死に包まれたこの時、このまま暗闇に滑り込んで溶け合いたいと思っても、夜は決して受け入れてはくれないのだった。
やがて黒い森の向こうに、青みがかった空が浮かび上がる。黒い世界は徐々に侵食されていく。色のない空間でこの存在は全てを虜にする。これを見たら誰だって欲しくなるし、惹き寄せられるに決まっている。
幾度となく見てきた景色。けれど必ず毎回、今この時も鼓動は高鳴り心地良い高揚感に満たされる。
夜の匂いが変わる。暗い死に囲まれながら、最も生を感じる瞬間。
———いつも朝日を待っている。
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