第18話 中西と電話

校長から停学が告げられた夜、中西から1本の電話がかかってきた。


特に電話に出れない理由などなかったので出ることにした。


「もしもし」


「もしもし! 私です!」


すごく元気な声でそう言った中西。『私です!』と言わなくても中西ってことは分かっているのだが。


「何の用だ?」


俺がそう訊くと中西は少し声のボリュームを落として話を始めた。


「謝りたくて電話をしました」


「謝る? 何でた?」


俺は疑問に感じたことをそのまま伝える。


「龍星さんが停学になったのは知っています」


「何でお前が知ってんだよ!」


電話越しでも分かるくらい俺の声のボリュームは上がった。


その声の大きさに少し驚いた中西は一度咳払いをして再び口を開いた。


「うちの学校の校長から聞きました」


校長から聞いたとは。情報が広まるのが早いな。


俺はそう思いながら口を開く。


「そうか。で、何で俺に謝るんだ?」


「それは......私のせいで龍星さんが停学になったからですよ!」


恐らく中西は、自分が校長に情報を漏らしたから自分のせいで俺が停学になったと思っているのだろう。


けどそれは違う。俺は今思っていることを簡単に中西に伝えた。


「そうじゃねえよ。俺自身のせいだ。だから謝るな」


俺がそう言っても中西は納得出来なかったのか先程よりも力強く言葉を発した。


「いいえ。私のせいなんです。」


全くこの女はめんどくせえ奴だ。


「俺のせいだって言ってんだろ! それを認めねえと俺は電話を切ってお前のアドレスも消す!」


『アドレスを消す!』という部分に引っかかったのか中西は少し動揺を見せる。


「で、でも......。」


「めんどくせえ女だな! 俺のせいだ! じゃあな」


俺はそう言って無理やり電話を切った。


するとその数秒後に中西から電話がかかってくる。しかし俺は、その電話を無視することに決めた。


程なくして中西から電話がかかってくることはなくなった。


俺は少し安心したがその瞬間次は中西からメールが届いた。


『無視しないでください』


ただの文章のはずなのに、どこか寂しいという気持ちが感じられた。


俺は後頭部をポリポリと掻いてスマホに文字を打ち始める。


文字の入力が終わると俺は中西にその文を送った。


『認めたか?』


そんな短い文だ。


するとすぐに既読がつき、1分も経たずにメールが返ってきた。


『認めました』


俺はそのメールを見て溜め息をつき口を開く。


「それでいいんだよ」


この場に中西はいないのに、まるで中西本人に伝えるようにそう言った。


俺は今言った言葉をそのまま中西に送った。


するとまたしてもすぐに既読がつき速攻でメールが返ってきた。


『はい』


俺はそんな寂しげなメールを見てまたしても溜め息をついてしまう。


『怒ってないからまた俺を頼れよな』


いきなり関係ない内容のメールを送った俺。


すると今度は3分ほど経って既読がついた。


『はい! 頼らせてもらいます!』


先程とは比べ物にならないくらいの明るいメールが返ってきた。


俺はそのメールを見て少し口角を上げる。


こうして俺と仲西の短いメールのやり取りが終わったのである。

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