第63話 今時の女子大生 1
さて、おやつの時間、午後3時こと15時まで、もう少し。
あとは、はーちゃんだ。もともとアシスタントで来てもらうつもりだったが、せっかくなので、彼女にも、思うところを話してもらおう。無理に鉄道の話じゃなくてもいい。
「じゃあ、あとは、はーちゃんだな。鉄道のことじゃなくてもいい、旅のこととか、何でもいい。話してくれるかな」
ぼくの呼びかけに答えて、はーちゃんが口を開いた。
皆さんはじめまして。はーちゃんこと安中はるみです。私は、鉄道のことは、正直、何もわからないと言った方がいいかな。
米河先生がいつぞや言っておられた言葉じゃないですけど、「鉄道の「て」の字も知らない」とまで自分から言うつもりはありません。
でも、先輩方のお話を聞くと、まさに、その言葉もあながち嘘じゃないな、とか、そんなことを思ってしまいました。私は、上本君のように鉄道のことを知ろうとして何かをしたとか、鉄道と名のつけられたサークルに行こうとしたとか、そういう経験は、一切ありません。
今私は、姫路市のはずれから西宮の大学まで、毎日電車で通っています。
「彼氏ですか?」
たまきちゃんの質問に対し、はーちゃんの声が少し上ずった。上本君が、興味津々と彼女の顔をうかがい見る。
どうやら、ふたりの目が合ったようだ。
「いませんよ!」
はーちゃんが、少しとがった口調で答えた理由は、こうだ。
「だって、女子大ですから、男子との出会いなんてそうそうあるわけ、ないでしょ。近くの大学のサークルとの合コンなんかあるだろうと思う人もいるでしょうけど、そんなことにウツツを抜かしていられるほど、私はヒマじゃありませんので・・・」
ぼくはここで「女子会」を制し、はーちゃんに助け舟を出した。
「もうその話はいいからさ、別の話に変えてくれたらいいよ。茶化すつもりはないけど、もしそう思われたら、申し訳ない」
はーちゃん、落ち着きを取り戻し、再び話し始めた。
私は、米河先生に、小6のとき、半年ほど、公立の中高一貫校の入試で課される適性検査試験対策として、主に作文を教わりました。入試自体の結果はだめでしたし、他に私立のK女子中高などを受験していたわけではありませんでしたので、そのまま公立の中学に進み、高校受験も経験して、さらに大学受験でも、あまりいい結果は出ませんでした。
しかし、大学に入ってから、中学受験のときに教わった「作文」の経験が活きてきました。もし私が、いわゆる「関関同立」とか、神戸国大とか、それなりの大学に合格していれば、確かに、その大学に在籍している、ゆくゆくはその大学の卒業生だ、ということで、自信をもって生きていけると思います。
しかし、大学受験の結果はともあれ、通い始めた西宮女子大で、いい先生に出会えたことで、小学生のころ学んだことが、今になって役に立っています。
私は姫路から西宮まで、電車で通っています。JRで通ってもいいのですが、大学の位置を考慮して、少し時間はかかりますけど、山陽電車と阪急電車で大学までの定期を設定してもらい、それで通っています。電車通学は、大学に入ってから今年で2年目です。上本君が板宿中高に通うのに山陽電車に乗っていたみたいですが、ちょうど、入れ違いになりますね。
大学の話はここではしませんけど、私、大学の同級生と、時々列車を使って旅行に行きます。昨年は、同じ大学の子もう二人と、私の高校の同級生で南甲学院に行っている子と、それから別の子の同級生で神戸国大に行っている子の5人で、広島まで青春18きっぷで行って2日ほど泊ってきました。神戸国大に行っている朝霧舞ちゃんが、広島の路面電車、全部乗ろうなんて言い出したので、私たちも、面白そうだからぜひやろうよ、ってノリで、広電の路面電車、全部乗りました。
舞ちゃんの仲のいい男子の同級生に、神戸国大の鉄研にいる船坂享君という人がいて、彼が、広電のことをいろいろ教えてくれて、ぜひ乗りたいって思ったそうです。
船坂君は、広島には神戸や大阪や京都や福岡で走っていた電車もあるし、新しい電車もあるし、専用軌道で宮島まで行けるし、いろいろあって面白いから、とにかく乗ってみて損はないって言っていたようです。私自身は、船坂君にお会いしたことはありませんけどね。
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