第52話 いよいよ、出発進行! 後編

 「皆さんこんにちは。O大学鉄道研究会OBの米河清治です。1969年生まれで、もうすぐ49歳です。私自身は小学5年でO大鉄研にスカウトされ、鉄道に関わる趣味事はたいてい経験して参りました。まあ、どれ一つ飛びぬけたものがない「器用貧乏」なところはありますけどね。最近は、鉄道ピクトリアルぐらいしか読んでおりませんが、若い頃は、鉄道ジャーナルや鉄道ファンも読んでおりました。私にとって鉄道趣味人としての目標は、鉄道ジャーナル創始者で元編集長の竹島紀元さんです。つい10年ほど前は、集中して1950年代から今までの鉄道ピクトリアルと鉄道史料も読みました。若い頃の竹島さんの文章も拝読しました。鉄道を利用した旅と申しましょうか、列車に乗ることは、もちろん好きです。せっかく乗るなら全線とか、その列車を全区間とか、そういう乗り方はよくしてきました。「食べ物を残さない」的な感覚が、こんなところまで影響を与えているような気もしますね。JRの全線完乗とか、まして日本の私鉄全線完乗とか、そういうことは特に意識してやっているわけではありません。ちなみに私、中学生の頃から当時の国鉄O鉄道管理局の人から「マニア君」と呼ばれておりまして、鉄研でも一部ではそう呼ばれていました。今は「格上げ」されて、「マニア氏」になっております。そういうわけで、鉄道の「旅」について、大手を振って語れるほどの者ではございませんが、皆さん、どうぞよろしくお願いいたします」


 何が「器用貧乏」だ。よく言うよ。

 マニア氏に引き続き、カメラマンの沖原さんが自己紹介。


 「皆さんはじめまして。カメラマンの沖原です。今年で56歳になります。現在、鉄道写真をはじめ様々な写真を撮影して生計を立てております。子どもの頃から鉄道が好きで、南正時さんの写真にあこがれておりました。ブルートレインの撮影で、よく大阪駅に行きましたね。中学生の頃は、夜中じゅういたこともありますよ。写真を撮るのは、今は仕事ですけど、列車に乗るのも好きでしてね。どうしても職業柄、クルマでの移動が比較的多いですけれど、撮影先の近くまでは、できるだけ鉄道を利用して、現地にはレンタカーで行くパターンが多いですね。いわゆる「撮り鉄」というファンには、いろいろ問題行為を起こす人間が多いのは確かですし、私もそういうケースを幾度となく見てきましたが、私自身は、南さんのように、撮影地ではシャッターチャンス以上に、そこでの人とのつながりを大事にするよう心がけています。おかげさまで、これまでに全国でたくさんの知人・友人ができまして、皆さんとともに、楽しく過ごさせていただいています。鉄道の旅がらみの仕事であれば、それはもう、喜んでお引き受けしていますね。どうぞ本日は、よろしくお願いいたします」


 最後に、上田さんがご挨拶。


 「皆さんはじめまして。私は南甲学院大学「鉄道の旅同好会」OBで、現在では鉄道紀行作家をしております、上田幸雄と申します。実は私、阪急ブレーブスのファンでして、苗字と名前がそれぞれ元監督のお二人と一緒なのですが、これはたまたま、偶然です。ペンネームじゃないですよ。阪急ファンの皆さんとは、今も交流がありまして、よく酒席のネタにされています。それはともかくとしまして、鉄道のお話をいたしますね。今の私は、別に作家専業というわけではありませんでしたが、一昨年定年を迎えて、現在は作家が職業という状態で過ごしております。子どもの頃から鉄道が好きで、そこは米河さんや沖原さんとよく似てはいますが、私は時刻表を読むことと列車に乗ってどこかに出かけることが好きでして、大学ではたまたま鉄道がらみのサークルがなかったので、「鉄道の旅同好会」なる団体を立ち上げました。現在も続いているようで、何よりです。大学卒業後は会社員をしつつ鉄道の旅を続けてきまして、国鉄時代のうちに国鉄全線、それからしばらくして、私鉄も含めた日本の鉄道全線を完乗しました。もっとも、新線が開通した段階で「タイトル防衛」をすべくあちこち行くことも、いまだにありますね。まあ、無理はしないように頑張っています。私も若い頃は、種村直樹さんの本を読んで、血沸き肉躍る思いで旅をしていましたね。ああいう文章を書きたいと思って、種村さんだけでなく、他の鉄道紀行作家の皆さんの本を読んで勉強して、そうですね、40歳のときにようやく、本を出せました。それからずっと、仕事の合間に旅をして、文章を書いて、いろいろやってきましたが、定年を機に、今は実質専業作家の状態です。まあ、年金が入るまでは、この仕事で十分補えるだけの状態ができて、感謝しています。今回は皆さんの中では最年長ということになりますが、どうぞ、よろしくお願いします」


 これで一応、皆さんの自己紹介が終わった。早速、話に入っていこう。ここまでで概ね、20分ほどかかったが、仕方ない。さて、何から話したものか?

 何をテーマに始めようかと、数日前から随分考えてはいたのだが、これというきっかけになるような題材、こういうときのほうが難しい。

 これが「あいつら」なら、適度にテーマを出して、行き過ぎは誰かに抑えてもらえばいいので、ある意味楽なのだが。


 「それじゃあ皆さん、お話されたい方は、まず、挙手をお願いします。どんなテーマでも、鉄道の旅に関わる話なら制限しませんので、どうぞどなたからでも」

 あえてぼくは、出だしのテーマを決めずに、出席者各位に丸投げすることにした。こういうメンバーなら、その方がいいかもしれない。

 さっそく、上田氏が手を挙げてくれた。

 上田氏のお話を、次回でご紹介します。

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