第48話 ブルートレインブームと鉄道雑誌(参考資料)
参考資料「年少者=低次論争」(これは実話です)
時 期 1978年4月~12月にかけて
当事者 鉄道ジャーナル、鉄道ピクトリアル各紙
両誌編集長 竹島紀元、田中隆三各氏
両誌読者欄に投稿された方々
1 鉄道ピクトリアル 1978年 6月号(同年4月中旬発売)
「言いたいこと」(読者欄)に、小松氏なる読者による「P(ピクトリアル)誌の編集方針について」の意見が掲載される。
「(ブルートレインの)ブームに乗った低次な読者」の影響を受けないがためにP誌は部数が伸び悩んでいると思われるが、それを打開するには、アカデミックな読者を集めることである、との論調。
その論に際し、F(ファン)誌やJ(ジャーナル)誌の名を引き合いに出し、P誌を持ち上げるような論法を用いた。
このことが、J誌竹島紀元編集長(以下「竹島氏」)の逆鱗に触れる。
2 鉄道ジャーナル 同年 8月号(6月中旬発売)
竹島氏が、タブレット(読者欄)に先立って1ページを割き、P誌6月号の小松氏記事を引用し、無関係な第三者を巻き込んで誹謗中傷されたことに対する怒りを表明。同時に、P誌編集長に対し公開抗議。
小松氏の論調を「ゴマすり」「悪女の深情け」などという言葉で難詰するとともに、F誌やJ誌を引き合いに出した、かかる「意見」をむやみに掲載したP誌に対する激怒をあらわにし、小松氏に対しても、かなりの皮肉と嫌味を込めた論調を張る。
竹島氏は、鉄道趣味誌は鉄道趣味者の手によって作られてきたことは確かに趣味人のニーズに合ったものを提供してくることができたが、その反面、本質的にジャーナリスト足りえず、そこが問題点ともなっていると指摘。
3 鉄道ピクトリアル 同年 9月号(7月中旬発売)
編集長田中隆三氏(以下「田中氏」)、J誌の「公開抗議」に「1回限り」と表明したうえで、回答。
P誌を持ち上げ他誌を非難した論調については、あくまで小松氏の自由意思によるものであり、それに対する竹島氏の抗議はいささか「酷評」だとは述べたものの、不特定多数の読者への「低次」との表現は不当語であると明言。編集会議において、「活字にすべきではなかった」との意見があったことを伝え、実質上の「謝罪」を表明。
「~謝します。」=「感謝します」とも「謝罪します」とも解釈できるような文末で、回答を締めくくる。
この号では、広告欄に宮脇俊三著「時刻表2万キロ」の広告が掲載されたほか(その数年来ではこれ1件のみ)、ブルートレインの走行音・車内音を録音したレコード(キングレコード)の1面広告を、裏表紙に掲載。翌10月号も同じく裏表紙に掲載(当時は主として、鉄道会社、メーカー、模型店などが出稿していた)。
4 鉄道ジャーナル 同年10月号(8月中旬発売)
竹島氏、田中氏の回答を了承し、公開抗議を取り下げると明言。
なお、同誌8月号の竹島氏の公開抗議に対し激励多数も、2件の批判的投書があり、そのうち1通の私信と表明していない角田氏(奈良県在住)の意見を1ページにわたって紹介。
角田氏の意見は、小松氏に賛同し、とりわけブームに乗った少年ファンを厳しく非難し、J誌においてはかかる読者は「排除」やむなしとの論調。
竹島氏は、この問題については引続き議論対象とすると言明。
少年ファンたちの意見を聞くという趣旨か。
5 鉄道ジャーナル 同年12月号(10月中旬発売)
同誌10月号の角田氏発言に対し、タブレット欄には11歳~17歳の年少者とされた少年たちから一斉に「抗議」が殺到。主たる意見を2ページにわたって紹介。粗削りなものもあるが、「しっかりした」論調の意見が多数(竹島氏弁。ただし、後年拝読した編者も、竹島氏と同意見です)。
成人からの意見も2通紹介し、1通は、オーディオファンを引き合いに出しつつ、「角田氏の意見は、よく読んでみれば形式論に過ぎない」と批判。
もう1通は、J誌だけでなくP誌においても常連投稿者で鉄道友の会会員の小倉氏。「低次」ととられかねないような投稿を慎み、きちんと調べたうえで建設的な意見を言い合えるような読者欄(タブレット)にすべきだという趣旨の内容。小倉氏は、10月号でも同趣旨で投稿されている。
竹島氏は、別枠記事にて、「私は少年ファンの味方でありたい」と表明し、同時に、角田氏のような意見もあるということで紹介したが、主として「先輩筋」から、このような文章を掲載するものではないとの「お叱り」を複数いただいたと述べる。
この号にて「年少者=低次論争」はひとまず打切ることを、J誌編集部が宣言。
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