かかりもの

清白瀬見

第1話君を掴む前編

高校1年生の夏の終わり、目の前で少女が車の目の前に飛び出した。


歩行者信号は赤で日本で義務教養を受けているのなら、小学生でも道路に飛び出しては行けないとわかる筈だ。しかしここで道路に飛び出しているのは高校生であって意図的に飛び出しているように見えるから恐らく自殺であろう。何故彼女の身分がわかるかだって?それは彼女が僕のクラスメイトだからだ。


「何してるんですかっ!」


僕は道路に飛び出た彼女を歩行者用通路に無理矢理引き戻した。危なかった…危うく彼女がトラックに轢かれてしまうところだった。


彼女は急にビクッとすると辺りをキョロキョロと見た後俺に詰め寄ってきた。


「す、すいません!意識が朦朧としてて…って継君じゃない」


「僕の名前と顔を覚えてるんですか?」


「んー。いつもうつ伏せで寝てるのが印象的だったからかな?というか継君なんで泣いてるの?」


「えっ?ほんと!?」


「ほんとだよ。もしかして私をギリギリで助けてほっとしたのかな?心配かけてすまないね!」


彼女は満面の笑みを浮かべながら手を俺の肩に乗せてきた。そして彼女はこの場を去ろうとしたが僕の肩に乗せてきた手を掴み引き止めた。


「ん?継君?」


「火…凛さん…」


「もしかしてこんな所でこんな人通りが多い時間に私への愛の告白かな?」


彼女は若干困惑の色を浮かべながら泣いてる僕を見てきた。俺は彼女を見た時から思ってたある疑問を彼女にぶつけた。


「何で首を絞められたような痣があるのに、堂々と隠しもせず生活出来るんです?」


彼女は驚いた顔をした後、僕の手を掴み無理矢理近くの路地裏に連れ込まれた。そして僕の胸ぐらを壁に押し付けながら質問を投げかけてきた。


「継さん。あなたこの首の痣が見えるの?」


彼女が今とった行動とは裏腹に表情は冷静で口調は大人しかった。


「あ、ああ。ハッキリと見えるよ。もしかしてその痣僕以外には見えてないのかい?」


道理で納得がいった。誰にも見られないなら隠す必要がないからか。


「そうみたい。何故かは分からないけどね」


そう言うと彼女は僕を離した。


「このことに関しては他言は禁止で。そしてこのことに関しての詮索も禁止。ちなみにこれはお願いじゃなくて命令ね」


「ケホッ…そ、そういう訳には…いかない」


彼女は心底嫌そうな顔をすると僕の小指を掴み躊躇なく手の甲へ向けて180°曲げた。


「ぐっ…あああああああああああああああああ」


僕は激痛を放つ小指を抱えながら彼女を見た。


「継さんってクラスにいる時と違ってこんなに声が出るのね。それでわかったでしょ?」


「何が…だよ!」


「私の命令に従わない場合君はタダではすまされないと」


「僕は火凛さんの…」


「そういうのは私はいらないの。それにそこまでしてあなたがこの事に関わるメリットはあるの?それとも唯の阿呆なのかしら?まあ忠告はしたことだし私は帰るわね」


彼女は友達と別れる時のように僕の方に笑みを向け手を振り去っていった。


「くっそ…」


僕は彼女の人間関係に入り込みたい訳じゃないが首に痕が残るほど締められるということは


①家庭で虐待を受けている

②火凛さんの彼氏がやばいやつ

③友達からイジメを受けている


普通ならこの3つに分けられるが火凛さんの場合どれにも該当しているとは思わない。何故ならその首の痣が僕にしか見えないからだ。そうなってくると新しく④が発生する。


④火凛さんは人外の力に干渉されてる


だとしたら火凛さんは探るなといったがそういうわけにはいかない。


僕は折られた指が『完全に』治ったかどうかを確認し再び帰路に着いた。

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