第九話 再びダンジョンへ


 ガリアス工房で規格の制定をする提案書を作成し終えた次の日の朝、優之介達は総勢十一人と言う団体様でダンジョンに潜っていた。




「ふふふ~、とても面白いですわね、ユウノスケ様♪」


「でもねソフィー、ここダンジョンだからモンスターが襲いかかってくるんだよ?」


「大丈夫ですわリオン様、自分の身は自分で守れます!!それに、私の身に何かあったらユウノスケ様が助けてくださるのですよね?」


「そ、そうだね! 俺がソフィーを守るよ!!」


「嬉しいですわ♥」




 ダンジョン内は何時、何処で敵と遭遇するかわからないので常に気を引き締めなければならないが、ソフィーリアがピクニック気分でいるのでどうも気が抜けてしまう。


 実際、ダンジョン内でモンスターと遭遇すれば葵や理音を筆頭にジャパニーズガールズが先陣を切ってはバッサバッサとなぎ倒したり、魔法で生成した炎やら氷やら岩をぶつけて倒したりと、野郎二人とイェクムオラム組は全く出番がなかった。


 今回のダンジョン探索はレベリングも兼ねている。故に現段階で既にレベルが六十三に達している優之介と、七十五に達している斬波の二人はバトルはおあずけである。


 更に「基本的に戦闘には参加しないで」と女性陣に釘をさされる始末、正直退屈だった。






――――――――――――――――――――






「よぉし、ここからは未見だから常に警戒しとけよ~」


「了解!」




 十階層を突破し十一階層目に突入した際に、斬波が背伸びをしながら優之介に常時警戒するよう指示を出した。斬波もちゃんと警戒しようね。


 因みに十階層のエリアボスは今回もオーガスケルトンだったので討伐に時間はかからなかった。斬波が濃硝酸をオーガスケルトンの全身に浴びせ、優之介とレミリアがひたすらボコる作戦であっけなく討伐が完了したのは良いが、葵から「なんて危ないもの生み出してるのよ!!」と突っ込まれた斬波は終始ちょっと凹んでた。




「別に良いじゃねぇかよ、濃硝酸くらい……」




 オーガスケルトンのドロップ品を回収し、十一階層に足を踏み入れた一行の目の前に現れたモンスターはゾンビ、グール等と言ったアンデッド系モンスターが主だった




「アアァ……」「グゥゥ……」


「うぃぃぃぃいい!?キモッ! キモすぎる!!」


「HOOOO……」


「いやぁああ! こっち来ないでぇぇぇえええ!!」


「映画等で慣れていると思っていましたけど、実物を見てしまうと鳥肌が立ってしまうわ……」


「特殊メイクもなかなかでしたけどやっぱり本物は違いますね……」


「ア゛アアァァァァ……」


「ちょ!?斬っても斬っても向かって来るんだけど!!何でぇ!?」




 女子大生組+咲良がキャーキャー叫びながら元気にアンデッドを討伐する様子を、野郎二人とイェクムオラム組はさながらゾンビ映画のワンシーンを眺めるかのように傍観していた。 




「アンデッドは文字通り不死ですから、戦いが長引けば長引くほどこちらが不利になりますね」


「アオイ達は今正に苦戦中というわけだ」


「……斬波さん」


「ん?」


「加勢しなくていいの?」


「葵達が『レベルを上げたいから』って言って俺らの参戦を拒んだんだ。問題ないだろ」


「で、でも……」




 時間が経つにつれ、徐々にアンデッドモンスターの群れに押されるジャパニーズガールズは、疲弊していてレベリングどころではなかった。


 少しSっ気が芽生えていた斬波はもう少し彼女達が参っているところを観察していたかったが、優之介とレミリアからの視線が居心地宜しくないので仕方なく助け舟を出してあげた。




「はぁ、しゃあねぇな。【炎砲ファイヤーカノン】」




―ドゴォォオオオオン!!




 斬波が放った魔法【炎砲】は【火球ファイヤーボール】と違い、燃えている岩石を高速で打ち出す事で破壊力を増している。


 本来であれば着弾時に爆発を起こして敵をまとめて吹っ飛ばすところであるが、それでは葵達も巻き込みかねないので岩石の硬さに魔力を注ぎ、爆発は極力抑えるようにして【炎砲】を放った。




「アァァァ―」―グシャァァッ!!




―グチャッ! ベキョッ!!


―ブシャァァァッ!!




「「「「………………」」」」


「「「「ぎゃあああああああああああああ!!」」」」


「う~ん、やりすぎたか?」




 斬波が放った【炎砲】はアンデッドの群れに見事命中し、次々とアンデッド系モンスターを肉塊にしていった。しかし、いくらモンスターとは言え人に近い形をしている生物? が自分の目の前で四肢が爆散する光景を見せられ、返り血を頭から浴びるなんて絶対に嫌であろう。


 ジャパニーズガール達は頭上から降ってくるアンデッドの血や身体の一部にとてつもない嫌悪感、恐怖心を抱かせ、凄まじい絶叫を上げながら走り回っている。阿鼻叫喚とはまさにこの事だろう。




「ワタシタスカッタ……」


「うげぇ……」


「……(ガクッ」


「あ、殿下! しっかりお気を確かに! 殿下!!」




 この光景にはイェクムオラム組もドン引きで、レミリアは片言になり、クラウディアは苦虫を噛み潰したような表情になり、ソフィーリアは安らかな笑顔で気絶してしまった。




「ここから先は俺と斬波さんで進んだほうが良さそうだね……」 


「そうだな……」




 この後、優之介と斬波がめちゃめちゃアンデッドを殲滅した。

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