第十二話 ワームドラゴン討伐!!


「ちょっとちょっと! 何呑気に見物とか言ってるんですか!?」




 優之介は混乱していた。なぜなら自分がワームドラゴンと戦っているように、彼もワームドラゴンと戦っているはずの斬波が「見物させてもらう」などと呑気な事を言っているからだ。




「もう一頭のワームドラゴンはどうしたんですか!?」


「あっちで伸びてるよ」




 斬波が親指でとある方向を指したので優之介はちらっとその方向を見てみると、そこには鈍器で殴られたような跡や切り傷が見られるものの、死因は別にありそうな状態のワームドラゴンの死体が転がっていた。


 なんで死因は別にありそうかって? ワームドラゴン死体が泡を吹いてるからだよ。


 斬波曰く「【死神が振舞う最後の晩餐】(Cmp from Mr, Death)を使ったら効果は抜群だったけど即死しなかったから+@でいろいろやったらこうなった」らしい。モ○○ターハ○ターでも毒で弱らせる作戦はあるが斬波の一酸化炭素中毒魔法はドラゴン相手でもチートだったようだ。




「この世界で斬波さんに勝てる生き物いなくないですか?」


「イェクムオラムのウイルスとかには勝てる自信ないぞ。それより今はワームとの戦闘に集中しな、来るぞ」


「……っ、うす!!」


「キシャァァァオ!!」




 優之介は再びワームドラゴンと向き合い、剣を構えた。ワームドラゴンは優之介に狙いを定めて突進してきたので優之介は剣で受け止めたが、体格差故に受けた衝撃はあまりにも大きかった為そのまま後方に吹っ飛ばされてしまった。




―ドシンッ!―




「いってぇぇ……、やったなぁ!!」


「グォオオオオオオオオ!!」




―ボォォォォ!!―




「あっち!」




 ワームドラゴンは優之介に突進した後、炎のブレスで追撃してきた。ブレスに気づいた優之介は咄嗟になってこれを躱したが、お尻に手をあてて熱がっている。火が少しだけお尻に引火したようだ。


 お尻についた火を何とか消し止め、ワームドラゴンに向き直った優之介はどのようにして攻撃すれば効率よく戦えるかを考える。




(このまま戦ってもジリ貧になりそうだなぁ……。何かいい方法はないかな? あの蛇みたいな身体は厄介なんだよなぁ……)




 何とか有効打を決めたい優之介ではあるが、隙を作らせまいとワームドラゴンが積極的に攻撃を仕掛けてくる。噛み付き、ブレス、テールスイング、その一撃一撃はどれも重そうで一発受ければ命はないと思える程だった。


 優之介は必死に攻撃を避けながらワームドラゴンをひたすら観察した。ワームドラゴンは竜種ではあるが外見は大蛇に近い。優之介はワームドラゴンをドラゴンとしてではなく蛇として捉えて考えてみた。




(あいつが蛇なら視力はさほど良くない代わりに嗅覚が良い、そして効率よく抑えるなら首根っこを押さえた方が良いよな……。それなら……)




 優之介はワームドラゴンの攻撃を避けながら考えた結果、ワームドラゴンの首根っこを地面に押さえつけることにした。【身体強化】で強化した脚力で後ろに回り込もうとするが、ワームドラゴンのしなる身体では回り込むことはできない。そこで優之介は地面を思い切り蹴り、高くジャンプした。その高さはゆうに二十メートルに達し、最高到達点に辿りつた時にはワームドラゴンを見下ろしていた。




「喰らえッ! 【炎弾ファイヤーバレット】の雨!!」




 優之介はワームドラゴンの頭上から火魔法を雨のように浴びせる。優之介を食わんと口を大きく開けていたワームドラゴンも怯んだのか、目と口を閉じて顎を下に向けてしまった。




「チャンス!!」




 ワームドラゴンは怯んだことで脳天から後頭部を優之介に見せた。この機会を逃すまいと優之介は空中で突きの構えを取り、剣にありったけの魔力を流し込む。




「いっけえええええええ!!」




 優之介は剣に全ての力と魔力を込めてワームドラゴンの脳天を目掛けて突き刺した。


 ドォォン!!と凄まじい衝撃で突き刺した剣は鱗と鱗の隙間からワームドラゴンの脳に確実に入り込み、致命傷は免れないだろう。




「ギャアアアアン!!」


「ギャアアアアアン!!」


「これでどうだ! 【炎砲ファイヤーカノン】!!」




―ボォォォン!―




 優之介はもがき苦しむワームドラゴンに目掛けて止めの一撃と言わんばかりの魔法を叩き込んだ。優之介の放った【炎砲】はワームドラゴンの口内に直撃した。




「グオォ……クァァ…………」




―ドシィィン……!!―




 身体の内外から脳に大ダメージを受けたワームドラゴンは地面に身を沈め、息絶えた。




「や、やったぞ! ドラゴンを倒した!!」


「congratulation! やったな優之介、最後の脳天に剣を突き刺したときは痺れたぜ!!」


「ありがとう、これで二人揃ってドラゴンスレイヤーですね♪」




 パァン! とハイタッチを交わして優之介と斬波は喜びを分かち合った。


 わいのわいのと騒いでいる野郎二人とは裏腹にレミリアとクラウディア、ハイエルフとダークエルフはもちろんのこと、ジャネットまでありえない現実を見ているかのような表情で喜んでいる野郎二人とワームドラゴンの死骸を見て固まっていた。


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