第四話 襲撃
「大森林って聞いてたから空気は湿ってると思ってたけど、息をすると気持ち良いですね~♪」
「この森林は風通しがとても良いんだ、だから深呼吸すると自然の香りがとても気持ちいい♪」
「今回は依頼ですけどまた機会がありましたらのんびりお散歩したいですね♪」
「ボールにするかコロにするか、それにプレス工程はどう乗り越えようか……」
「「「…………」」」
優之介、斬波、レミリア、クラウディアの四人はエルフの里に向かって森林の中を歩いてる真っ最中だ。優之介、レミリア、クラウディアは森林の居心地等を話したり自然を楽しんでいるが、斬波はボールベアリングをどう生産しようかを思案している。ものづくりになると周囲の事はそっちのけになるのはやはり斬波らしいが、一人だけ周囲に馴染もうとしない斬波に対し、三人は斬波をジト目で睨みつける。
「なぁシバ、そのボールベアリングとやらは置いといて依頼に集中しないか? もう森林に入っているのだぞ」
「ん? あぁそうだな……何でもここを行き来する商人やエルフが襲われてるんだったな。優之介、【
「まだ何も反応はないよ」
「私の【
優之介旅の途中で斬波から魔法を教わっている。故に優之介と斬波はほぼ同じ魔法が使えるわけだが、何故か優之介は【
魔法の練習がてら優之介が【魔力反響定位】、レミリアが【探索】で警戒網を張っているが、今現在は何も反応がないまま、クラウディアが御者をしている荷馬車は進み、その周りを優之介達が護衛する形で森林の中を歩いていく。
「そういや、襲撃を仕掛けた犯人は何者なんだろうな。複数人の盗賊か、はたまたモンスターか」
「被害者の証言によると襲撃犯は複数人の人間らしいのだが、全身をローブと仮面で姿を隠していてどこの誰だか全くわからなかったそうだ」
「ローブと仮面ってー……」
―ササッ!
「あんな感じですか?」
クラウディアの話に合わせたようにレミリアが目の前に現れた人物? に人差し指を指して確認する。クラウディアは「そうそう、あんな感じでー……」と呑気に言っているが、自分の目の前に件の犯人が現れたことを自覚するとキリッと表情を引き締めて御者台から降りて腰に差していた剣を抜いて構えた。
「何者だ貴様!!」
「え!?【魔力反響定位】に引っかからなかったよ!!」
「私の【探索】にも反応しませんでした!」
「俺もやっているが反応が……いや、放った魔力に触れると雪のように消える感覚が残る。この感じだと数は目の前のやつを入れて二十……、囲まれたぞ!!」
一行が気がついた時には既に、数十人のローブ仮面が一行を囲んでいた。ローブ仮面の集団は人員の配置が終わると、荷馬車の真正面にいたローブ仮面が一歩前に出て話し始めた。
「王国の近衛騎士団副団長がこんなところにいるとはな」
「最近、ここを行き来する商人やエルフが襲撃されていると聞いてな。犯人はお前らか?」
「これから死ぬ貴様らに教えてやる必要はない。まぁ、お前とそっちの女は生け捕りにすればいい金になるだろう。やれ!!」
正面のローブ仮面の合図で一行を囲んでいたローブ仮面が一斉に襲いかかる。ローブ仮面の連携に優之介達は複数対一の不利な状況で戦わざるを得なくなってしまった。
「レベルは高いようだが対人戦闘の経験は浅いのがまるわかりだぜぇ!」
「なっ!?」
―ザシュッ!
異世界に転移して何度かモンスターと戦って倒したことがある優之介だが、対人戦闘、人と人による殺し合いは今回が初めてである。現代日本人としては人を殺せる武器を持って人と戦う事に抵抗があった。
ローブ仮面にそのことを見透かされた優之介は相手に翻弄され、攻撃を受けてしまう。
「ユウノスケさん!」
「おっとお嬢ちゃん、自分の心配をした方がいいじゃないかぁ?」
「余計なお世話ですっ! はっ!!」
―バシィッ!!
そんな優之介とは裏腹に、レミリアはローブ仮面三人を相手に鞭を上手に使って応戦している。
(レミリアがあんなに必死で戦ってるのに、何やってんだ俺は……。ここは日本じゃないのに…………!!)
そんなレミリアを見て優之介は心のそこから震え上がった。
「やっぱりこの世界では殺らなきゃ殺られるって事か……」
「ハッ、ごちゃごちゃ言ってねぇでとっととくたばれ!!」
―ヒュッ!!
「遅いッ!」
―ザンッ!
優之介の命を刈り取らんとローブ仮面が剣を振り下ろすが、優之介はそれを素早く躱しローブ仮面にカウンターを喰らわせる。優之介のカウンターを受けたローブ仮面は絶命はしなかったものの、相当な深手を負った。
「ぎゃああああああ!!」
「おい!」
「俺の事は気にするな! とっととこいつら殺して積荷を奪え!!」
現場はまさに乱戦状態、整理しづらい状況下にも関わらずクラウディアは優之介達に指示を出す。
「荷物に構うな! なるべく固まれ!!二人共大丈夫か?」
「俺は問題ないです、レミリアは大丈夫?」
「はい! 私は大丈夫です!!ユウノスケさんのお怪我は……」
「こんなのかすり傷だよ、それより斬波さんは……」
優之介、レミリア、クラウディアは三人それぞれ背中を合わせてローブ仮面集団と対峙している最中、斬波は愛用している【山崩】を振り回し、刃がついてない部分でローブ仮面達を殴り飛ばしていた。
「おらぁ! そんなもんかよ!!」
―ドゴッ!
―ボゴォッ!!
「うわああ! なんなんだコイツ!?投げナイフが刺さらねぇ!?」
「先日殺した冒険者より遥かに強ぇぞ! いったん距離を取れ!!」
「おっと、その発言は聞き捨てならねぇなぁ!!」
―ドカァッ!!
「お前ら無事か!」
「まぁ何とか……セイヤッ!!」―キィン!
「相手がヒットアンドウェイで戦ってくるのでキリがありません!!」
「この程度なら一度に五人までなら相手できるが、六人はキツイな……」
「そうか……。皆が固まっている今なら【死神が奏でる子守唄】を放てるがどうする? 幸い向こうには魔法使いがいないみたいだしな」
優之介達が戦っている相手、ローブ仮面の集団は誰ひとりとして魔法を使って来ていない。魔法が撃てるのだったらとっくに放っているはずだ。
「流石は近衛騎士とその仲間だな、そう上手く行かねぇか……」
ローブ仮面の一人がそう呟いた時だったった。
―ヒュンッヒュンッ! ドッドッ!!
何も見えないところからいきなり矢が飛んできた。その矢を見たローブ仮面が潮時と判断したのだろう、仲間に指示を出した。
「チッ、援軍か。おいっ、ここは一旦引くぞ!!」
指示を聞いたローブ仮面の集団は瞬く間に森林の奥深くに消えていなくなってしまった。
「何とか追い払えたのかな?」
「そうだといいがな……」
「それより、今飛んできたこの矢は……」
「安心しろ、これは味方だ」
クラウディアはそう言うと矢が飛んできた方向に顔を向けた。クラウディアに連なって三人もその方向をに顔を向けると、そこには複数人の人がいた。いや、パッと見は人ではあるが、彼らは全員耳が人より少し長く先が尖っていた。この特徴を捉えた優之介と斬波は、自分の目の前にいる存在が何かを直ぐに理解した。
「あ、あれがエルフ……」
「想像以上で驚いたぜ……」
ラノベ大好き野郎二人が初めて出会ったエルフは彼らの想像以上に美しかった。
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