第17話 友達できた

「はい、どうぞ」


 入口に向かいながら返事をすると、上級生らしき二人が部屋に入って来た。


 うわあ、すごい。なんて綺麗なペアだろう。


 宝塚の世界って感じ。


 一人は耳の下でプスリと真っすぐな金髪をそろえたミリアムブルーの瞳の王子様。そう、どう見ても王子様だった。姿勢も真っすぐに背を伸ばし、カツカツと歩いて来る。


 貴族の子女でこんなに髪を短くしているなんて珍しいけど、とても似合ってる。


 もう一人は、濃い茶色の大きな巻き毛の房を背中にゴージャスにいくつも垂らした、緑の瞳の優し気な美女。


「はじめまして、舎監をしています最上級生のサラ・エンドレイです」


「あ、シタン・ヴィエルジュです。よろしくお願い致します」


 ペコリとおじぎをする。


 この人、声まで少年ボイスだ。とてもハスキーな声で背が高くて、切れ長の瞳が涼し気だ。


「私は4年生で副舎監のブルック・マサラです。よろしくね」


 胸がおおきくて、優しそうな外見だ。ふんわりとほほ笑むと聖母って感じする。ちょっとおかあさまと雰囲気が似ている人だ。


「はい、シタン・ヴィエルジュです。よろしくお願い致します」


「さっそくだけど、今日の夕食は新入生の歓迎会もかねているので、必ず出席して下さい。午後6:00から始まりますので遅れずにね」


 舎監からそう言われた。


「はい、わかりました」


「食事の服装は基本、セミ・フォーマルかフォーマルです。朝食時もそうですが、朝は忙しいので制服でも大丈夫です。朝食は早めの6:00からビュッフェ形式で食堂が開いていますので、8:00までに済ませて下さい。授業は9:00から始まります。明日の入学式は講堂で8:30集合ですよ」


 こちらは副舎監から言われた。


「あ、はい、分かりましたありがとうございます」


「行事や連絡事項、授業の時間確認は、舎監室前の掲示板に張り出されています。舎監室は玄関近くの1階にありますので、何かあれば訪ねて下さい。何か他に質問はありますか?」


「いいえ、今の所はありません」


「「では、良い学園生活を」」


「ありがとうございました」


 かっこいいなあ。すごいなあ、と感心しながら、夕食用のセミ・フォーマルの服を選ぶ。朝は制服にしよう。


 夕食時に知ったのだけど、女子寮と男子寮は学校を挟んで左右に別れている。


 昼食は学食で数種類ある中から好きな物を選べるとの事だった。



 今日の新入生歓迎会は女子寮だけのもので、後日男子と混合で新入生歓迎パーティーが開かれるそうだ。


 そんなのいらないと思ったけど、強制参加だそうだ。


 今年の新入生は女子23名。男子21名だそうだ。だいたい毎年50名前後だという話だった。


 

 舎監をされている最上級生のサラ・エンドレイ先輩は、卒業後は既に魔法騎士の見習いに就職が決まっているそうだ。魔法騎士も憧れの職業だ。


 新入生のテーブルは、皆同じテーブルで向かい合った列になっていたので、そこで顔合わせが出来た。


 その中で、特に目立って問題を起こしそうなのが対面のテーブルの斜め左あたりにいた、ラクアナ・ミンティと名乗った少女で、ミンティ侯爵家を連呼していた。


 魔術学院では、学生は皆対等、貴族的な身分は除外して学業に励む事を要求される。


 入学しても、学校の理念に沿わない者は直ぐに退学させられると聞いている。大丈夫だろうか?よけいなお世話だろうから、知らんふりしている。皆同じ気持ちらしく、似たような対応をしていた。


 右隣の少女が声をかけてきた。


「あの、私、デリア・カーチスです宜しくね」


 左隣の少女からも声がかかった。


「私は、リリアナ・ベルベットです。宜しく」


「シタン・ヴィエルジュです、お二人とも、よろしくお願いします」


 デリアは西の辺境からやって来たそうだ。


 リリアナは南の海沿いの街から来たと言っていた。


 部屋も近くだし、なんだかどちらものんびりした雰囲気を持っていて気が合いそうな二人だ。明日の朝食の時間を約束して、一緒に食べることにした。


 明日は入学式で、男子との顔合わせがあるらしい。クラスはだいたい男女半々で二クラスに分けると聞いた。


 どんな授業があるのか楽しみだ。


 朝食の時に、週末は土日は学校が休みだから、二人には買い物に一緒に街に出ないかと誘われたのでOKした。


 二人とも王都には来た事がなく、街の中を案内して欲しいと言われた。それ程知っているわけではないと言ったら、それでも良いを言われたのだ。


 女の子同士で街を歩くのは初めてだ。友達ゲット出来て良かった。


  

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