第10話 魔術学院に行きたい
馬車で一日かけて王都に着いた。
それまでに、荷物は王都の屋敷に送っていて、私達の為に用意された部屋には荷物が運びこまれて片付けられていた。
裕福なヴィエルジュ伯爵家のタウンハウスは部屋数が多い庭付きの立派な屋敷だった。
タウンハウスには向こうで雇われた使用人が配置されているけど、身の回りの世話をする侍女はこちらの侍女をそのまま連れて行く事になった。
私の侍女のアンも王都に行くことになり、めっちゃテンション上がっている様子だった。
「シタンお嬢様、アンはとても楽しみでございます。まさか王都に行けるなんて思っておりませんでした」
「そう、楽しみができてよかったね」
「はい、向こうでもちゃんとお勤めさせて頂きます。よろしくお願いいたします」
「ありがとう。よろしくね」
そんな私の様子を見ながら、マリーンは嬉しそうに抱き着いてきた。
「シタン、王都には人気のお店がたくさんあるそうよ。一緒にお買い物しに行きましょう」
「はい、おねえさま」
「お母様楽しみだわ、きっとシタンに似合う可愛いドレスや小物がたくさんあると思うの。だってこんなに可愛いんですもの」
「そうね、楽しみね。流行りのドレスやおいしいお菓子もたくさんあると思うわ。シタンちゃんのドレスはどれもマリーンのお下がりだから、新しいのを用意しなくてはいけませんから」
「きゃーたのしみっ」
「わたしは、おねえさまのドレスでいいの。かわいいのたくさんあるから」
「ダメよ、シタンのドレスは、新しいの作らなきゃ。もっと、そう、ハッキリした色の方が似合いそう。黒い髪だからきっと素敵よ」
ドレスよりも動き安いシンプルなワンピースとかでいいんだけどな。庶民の服がいい。とは言えない・・・。
そして、王都の屋敷に到着した。
部屋は日当たりの良い南向きの部屋で、マリーンの隣の部屋を用意されていた。
内装は可愛らしい水色の内装で整えてあり、何もかも新しくされているようだった。
「おかあさま、おねえさま、ありがとうございます。とても綺麗なおへや」
「まあ、喜んでもらえて嬉しいわ」
「ねっ、シタンはピンクよりも水色が好きなのよ」
マリーンが得意げにエレン夫人に言っている。
そうそう、マリーンみたいに何もかもピンクにされてはたまらないので、水色が好きなのアピールをしておいたのだ。良かった。
その日は屋敷の探検という事になり、マリーンに連れられてあちこち回った。
「やあ、マリーンやっと来たね。待っていたんだよ」
カノスが学校から帰って来て、マリーンを探してやって来た。
すかさずマリーンの背後に隠れて、スカートを掴む。
「お義兄様、突然びっくりするではありませんか。シタンを驚かさないで!」
めっちゃマリーンに怒られている。
「あ、ああ。ごめんよシタン。もう驚かさないから」
「だったらいいですわ。今度からそっと遠くから声をかけて下さいましね」
私の代わりにマリーンが返事をした。
「ああ、分かったよそうしよう」
私はそっとマリーンの陰からカノスの様子を伺い見た。
おおっ、マリーンから気付かれないように、めっちゃ私を睨んでる。
ほらね、反省なんてしていないんだよ。怖い怖い。
カノスは確か、シタン程ではないにしても、魔力は強い方だった。母が亡くなったのは、カノスを先に産んでいたのでより身体の負担が重なったのだ。フン。それなのにシタンばかり憎んでいる。もういいかげんにしろといいたい。
でも、ここで追い出されたり酷い目に遇わされるより、大人しくしていてヴィエルジュ伯爵家はATM代わりに使わせてもらおうと思っている。
学校に通うのにもお金がかかるもん。
シタンは攻撃魔法も、治癒魔法も使える稀有な存在だったはず。
少しずつ練習して、魔術師様の弟子にしてもらえるように準備しないといけない。
その時さらに決意を固めた私だった。
そうだ。さっきマリーンに教えて貰った図書室で魔術の本を読んでみよう。
シタンの記憶だけでなく、異世界転生チートもあるみたいで、この国以外の言語が読めるようだ。街の看板なんかも色々読めたので、これはイケると思った。
力のある魔術師は、この国では特別扱いだから、王子の嫁候補なんかにならなくても、魔術師になるのが一番良い。貴族学院には行きたくない。(王子がいるから)
特出した魔術の才能があれば、ユーノスが通った魔術師学院に通えるはずだった。
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