劣等感が泣いている
中洲ノ粤犬
第1話
俺には何があるだろう。特段なにかに秀でているわけではなく、また他の人と同じ様にしようとしても手間取り、小馬鹿にされる。
どうしろというのだ。
「まだ若いからなんでもできる。」俺より数十年上の先輩方は簡単にそう言うが、それがすべての若者に当てはまるわけではない。
まったくだ。その台詞は聞き飽きたよ。
「エネルギッシュにいけるものならとっくにいってるさ。」俺の心がキリキリと傷みながらか細い声でそう呟いた…。
まるで押し潰されるような人生だった。
「出る杭は打たれる」「協調性がない」「要領が悪い」ガキの頃から散々打ちのめされてきた。
所詮、連中にとって自分がどうするかは問題ではないのだろう。仲間とうまくやることで彼らの頭の中は占められている。気に入らないやつは俺みたいに処刑される。
「出る杭を伸ばす」「個を尊重する」「真心込めて丁寧に」そんなことは微塵も思ってはいないのだろうな。無機質だ。
周りに合わせる笑い、空気の読み合い、スピード勝負、それが『ここ』で生きていく中では大事だね。それはロボットの回路のように連結されて俺の頭を狂わせる。
「疲れているのか?」「少し休めよ。」
だが、お前の気遣いが更に俺を辛くする。
そんなのは常套句だ。
「甘えるなと言われてきたんだ。お前に甘やかされると腹が立つ。」と劣等感は俺の心に向かって唾を吐きかけた。
劣等感が泣いている…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます