第19話
俺は流されるまま、早川の家に行き、早川の望む通りの行為を済ませて、一時間ほどでまた帰路に着いた。
早川の家から俺の家まで帰るのにかかる時間は、十分もかからない。
今の悩み事の解決策を考えるには、余りにも短い時間だった。
帰宅してからは、できるだけ早川の顔やセリフを思い出さないようにしている。
さっき園中からLINEが来た。武藤と笠原の関係についてだった。今日の観覧車のゴンドラ内で起こった出来事、やはり武藤は笠原に告ったらしい。でも、ストレートに告ったのではなく、軽く、そう軽くらしい。軽く告るってなんだよ、と思ったが、笠原の出した回答に驚いてそんなのはどうだって良くなった。
———笠原は保留にしていた。
つまり返事待ちという状況らしい。だが、武藤と付き合える可能性は、かなり低いという話をしたとのことだ。
意外だった。笠原はなんかイメージ的に白黒付けるタイプの人間かと思っていた。自分のことを無条件で好きになってくれる男を、逃したくない心理が働いたのか。
俺は自室で彼女にLINEした。
自分>今、何してる?
美月>青野のこと、考えてる
自分>笠原面白くないよ。武藤のこと、聞いてもいいか?
もう訊くことは決まっている。だから返事に十秒もかけやしない。
自分>武藤に返事、しなかったらしいね。何か理由でも?
そこから中々返信が来なかった。返信されたのは、俺がLINEしてから、たっぷり十分待った後だった。
美月>青野ってさ、早川さんと付き合ってるの?
え?
なぜそう思ったのだろう。今日、笠原がずっと武藤と話しているせいで、早川といる時間が長くなったからだろうか。
もしそうなら、勘違いも甚だしい。
自分>いや、付き合ってないけど
俺の質問には答えずに、笠原は俺に問う。さっきとは違って、すぐに返信は来た。
美月>嘘、吐かないでよ
美月>私見たから、早川さんと一緒に帰ってるところ
美月>私見たから、早川さんが早口で青野に言ってるところ
美月>私聞いたから、早川さんが青野に、コンドームがどうとか、セックスとか言ってるの
最後で思わず噴き出した。
笑いを堪えきれなくなったのは本当だが、よく考えたらそれどころではないことに気がつく。
「これ、バレたな」
俺は頭を乱暴に掻き毟る。
美月>青野はさ、早川さんとセックスしたの?
美月>青野はさ、早川のことが好きなの?
笠原はきっと純粋なんだ。人は誰かを必ず好きになると思っている。相手を大切に思っていても、自分にとっていなくなったら困る人だろうが、俺は。
———人を好きになることも、嫌いになることもない。
【あとがき】
明日の投稿はお休みです。
詳しくは、近況ノートをご覧ください。
マジですみません……。
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