第3話

「いらっしゃい、和人くん」


 俺はエレベーターを使い、五階まで上がる。そして、505号室を訪ねると、早川が出てきて、ドアを開けてくれた。


 早川は茶髪のロングヘアーを後ろでポニーテールにしていた。

 早川の容姿は、恋人が五人くらいいても疑いを持てないくらい、整っていた。

 大きな目に、高い鼻。笑顔になったときに現れる笑窪が可愛い少女だった。


 今の早川からは、いい匂いがする。


「私、お風呂入ってきたから、早速ベッド行こ」


 俺は顔面に僅かな微笑みを浮かべて、靴を脱いだのだった。




「ほら、来てよ」


 俺を早川はベッドの上から呼ぶ。可愛らしく手招きしていた。

 早川は薄いワンピース姿で、ベッドにぽつんと座っている。


「今日はどうする? 早めに終わらせた方がいい?」


「んー、いつもと同じくらいでいい。気持ちが盛り上がってきたらって感じかな」


 その要望にうなずき、俺は早川をベッドに押し倒した。

 整った顔が目の前にくる。少しドキッとしたが、表情に出さないようにした。


「私が先に脱いで、一人でしてるとこ、見たい?」


「別に興味ない」


 彼女に目の前で自慰行為をさせるのは、気が引けるので、セフレにやらせるとかいう話は、なんとなく聞いたことがある。

 でも俺はマジで興味が無かった。


「別に遠慮しなくてもいいんだよ……? 私、結構声出す余裕あるくらい慣れてるから」


「何それ。俺の前で、しかも一人で喘ぐってこと? わざわざ俺を呼んでおいて、一人でやってどうするんだよ」


「普段とは違う淫らな姿が見たい、っていう男の子なんか、世の中にたくさんいるでしょ」


「その中に俺を入れないでね。だって濡らす必要なんか無いでしょ? 雰囲気だけで濡れるんだし。いつもそうじゃん。この前もそうだった」


「うるさい」


 彼女は笑った。俺も少し笑う。

 俺が押し倒して、見つめ合った状態のまま、早川とそんなくだらない話をした。


 たいして緊張もせずに、その先へ進んでいく。

 お互いに笑顔で、服を脱ぎ始める。早川はワンピースを肩から外して、下から。俺は普通に上から順番に脱いで行った。


 まだ外は明るい。窓から差し込んでくる日光が、それを証明していた。

 目に入らないように、カーテンを閉める。すると、微妙な闇に、室内が支配される。カーテンを閉めても、やっぱりなんか明るかった。

 

「今日、ありがとね?」


 早川がふいにそんな言葉をかけてくる。


「だってこれって、私の我がままでしょ? この関係にしたのも、私だし。呼び出したのも私。これで和人くんに何のメリットがあるのか、分からないけど」


 何を言ってんの? そんなの———


「私って、家族がいないし……。人の温もりが欲しかったっていうか……。そんな感じで、和人くんに声をかけたってことなんだけど……」

 

 いや、だってそんなの……。


「まあ、とりあえずやろっか。ね?」


 


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