第216話 ワカナちゃんからのお願い

「コーイチが1ヶ月後にカズ兄と互角以上の戦いをしたら、私たちのクランに入れてあげてほしい」


 ワカナちゃんからのお願いに対する私の答えは……


「もちろんです!カズさんの場合、身体強化は使わずにということですよね?」


「……うん。カズ兄が身体強化を使ったらコーイチに勝ち目ないだろうから」


 後半部分はヒソヒソ声でしたが、ワカナちゃんの言いたいことは分かりました。ともあれ、カズさんには改めて話をしておく必要がありそうです!


 コーイチさんもお節介だのなんだのと不満げでしたが、ワカナちゃんに根負けしてオッケーを出されたのでした。


「……コーイチ、1ヶ月の間に強くなれるだけのことをしてほしい」


 ワカナちゃんが1ヶ月の期間を設けられたのは、コーイチさんに出来る限りブランクを埋めた状態で再戦をして欲しかったから。それは何となく分かっていましたが、コーイチさんが1ヶ月で上げられるステータスにも限度がありますし……


 私の予想はコーイチさんはカズさんに負ける。


 実際に戦ってみて、この予想は十中八九当たると思うのです。だから、ワカナちゃんからのお願いを引き受けることにしたのです。


 私としてはコーイチさんはチームとして動くのは難しいと第5回イベントの際に感じたので、クランに入っていただくことを渋っているというのがまごうことなき本心なのです。


「それじゃあ、オレは帰る。今日は来てくれてありがとな」


 恥ずかしそうに顔を赤らめるコーイチさん。そして、コーイチさんからお礼を言われたワカナちゃんも顔を赤くしておられるのが印象的でしたが、コーイチさんが逃げるようにログアウトしてしまわれたので、そんな光景を見ることができたのはは一瞬だけでした。


「ワカナちゃん、コーイチさんを入れるのに必死みたいでしたが、何か理由があったりするのですか?」


 そうです。ワカナちゃんがお願いをして来たりしているのを見ると、そこまでコーイチさんをクランに入れたい理由があるのかと思ってしまったのです。


「……私、コーイチにまた学校に来て欲しくて。学校に来てくれればいっぱい話せるけど、今はメッセージのやりとりばかりだから。それで……」


 ワカナちゃんはたどたどしく、色々と話をしてくださいましたが、要するにワカナちゃんはコーイチさんともっとお話がしたくて、学校にも来て欲しいということ。


 そんなワカナちゃんの話を聞くと、コーイチさんは協調性がないからクランに入れたくないと思ってしまったことに自己嫌悪してしまった私なのでした……

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