第203話 飛竜との戦いを終えて

「ふぅ……」


 ゴーグルを外して数時間ぶりに外の景色を見てみれば、夜だと感じさせるような暗さになっていました。空には月と星が煌々と輝いているのですが、ここまで綺麗な星空は都会では拝もうと思っても拝めるものではありません……!


 今思ったのですが、ここに滞在している間に、星空観察をしてみるのも良いかもしれません!


 そんなことを思っていますと、カズさんやワカナちゃんもゴーグルを外して、SdnGの世界からご帰還なされたのです。


「カズさん、ワカナちゃん。飛竜との戦い、お疲れ様でした!」


「ああ、ハルこそお疲れ様。さすがに疲れたな……!」


「……ほんの数分の戦いだったけど、かなり疲れた……」


 ワカナちゃんは畳の上でゴロリと寝ころばれましたが、そんな様子や表情からも疲労が見て取れます。対して、カズさんは疲れていると言っても、ワカナちゃんほどではないように見受けられるのです……!


「言っとくがハル。俺だってかなり疲れてるからな」


「ま、またしても顔に出てましたか!?」


 これにはカズさんもコクリと首を縦に振るのみでした。やはり、この表情に出やすいクセは何とかならないものでしょうか……?


「あ、ハルさん?今、入っても大丈夫ですか?」


「はい!大丈夫なのですよ!」


 突然、隣の部屋からルビアちゃんの声が。私から入るように促し、入って来たルビアちゃんは着替えなどを持っておられました。


「あの、マサミさんが女子から先に露天風呂に入ろうという話になったんですけど、ハルさんとワカナちゃんもどうかなって思って」


「……入る」


 ゴロンと寝ころんでいたワカナちゃんも露天風呂という言葉を聞くなり、体を起こされました。その速度からも乗り気なのが十分すぎるほどに伝わってくるのですよ……!


「じゃあ、女子から風呂なら出て来てから俺とマサルが入るってことだよな?」


「そう……なりますね」


 カズさんもマサルさんも疲れているでしょうに、私たちだけ先に入るのも何やら申し訳ない気が……


 とはいえ、一緒に入るわけにもいきませんし、早く出てしまってはもったいない気もするのです!こ、これは難しい問題なのですよ……!


「ああ、ハル。俺たちに気を遣って早く出て来なくていいからな。俺はちょっと本館の方で用事を済ませてくるから」


「用事……ですか?」


 用事とは一体何の用事なのか。気になるところではありますが、余計な詮索はしないでおく方が良さそうです。


「でしたら、カズさんは用事を済ませて来てください。私たちもあまり長風呂にならないようにしますので」


「ああ、分かった」


 こうして私はワカナちゃんとルビアちゃんのおふたりと露天風呂へと向かうのでした。

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