第43話 治癒の魔法

 このままではルビアさんが巻き込まれてしまいます!それだけはダメです!


 私は高出力で氷魔法を放って私にトドメを差そうと跳躍するコボルトを凍り付かせました。


 その凍り付いたコボルトをサーベルで一刀両断。これで残るはコボルトロードだけ!


 私は休む間もなく、コボルトロードへ突撃します!こういう時こそ、攻めの姿勢です!忘れてはいけません!


 もう体力ゲージは残り1割をきっていました。やはり、先ほどのコボルトロードの攻撃が直撃したのがマズかったです……!


「“ヒール”!」


 私が突撃して、間一髪コボルトロードの爪での攻撃を回避したタイミングで、私の体は白っぽい光の粒子に包まれました。


 ……これは治癒魔法でしょうか?HPがほんの少しだけですが、回復していました。


「……って、ルビアさん!?」


 岩陰に隠れていたはずのルビアさんは白色の杖を掲げて、治癒魔法を発動させてました。


「ハルさん、前!」


 私はルビアさんの声に弾かれるように前を向くと、コボルトロードが第二撃を振り下ろさんと構えておられるところでした。


 ですので、私は下がらずに前へと進み出ました。


 こればっかりは私の予想通り、コボルトロードの懐に潜り込んだことで攻撃が当たらずに済みました。


「ヒール!」


 そんな時、またしても回復魔法でHPが回復しました。ルビアさんはひたすらに回復魔法を発動してくださっているようです。


 でしたら、ここはルビアさんに回復はお任せして、私は目の前のコボルトロードと戦うだけです!


「“アイシクルショット”!」


 私が氷魔法レベル4になって、ようやく使えるようになった魔法、“アイシクルショット”は特大の氷の弾丸を相手に向けて発射するモノです!


 これが今の私が撃てる最大の魔法!


 コボルトロードは“アイシクルショット”の直撃を受けましたが、胸元に突き刺さる“アイシクルショット”を両手で挟み込むようにして、急所に当たらないようにしていました。


 ですが、これで怯んでいてはいけません!


 私はコボルトロードの足下へ滑り込み、そのまま背後へと抜けました。


 そこから反転、サーベルでコボルトロードの胸部を背後から貫きました。


「グルルゥオオォォォッ!?」


 コボルトロードの断末魔が響き渡り、地面に重苦しい音と共に倒れた後、光の粒子となって消滅しました。


 どうやら、私たちは勝てたようなのです……


「ハルさんっ……!」


 涙を流しながら私の元に駆け寄って来てくれるルビアさん。私は「大丈夫なのですよ」とだけ答えて、二人で一緒に町まで戻りました。


 ……コボルトロードのドロップアイテムを抱えて。

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