第24話 合流

「おい、彼女嫌がってるだろ。話せよ」


 私が顔を上げると、そこには170センチくらいの背丈に清潔さを感じさせる服装をした男性の方がおられました。


「誰だ、テメエッ!」


 私を抑えていた男の人が止めに入って下さった男性に突っかかっていこうとなされましたが、


「……てい」


「アガッ!?」


 男性の後ろから不意に現れた小柄な女の子が傘で男の人の……その、デリケートな箇所を抑揚のない声からは想像できないほどに勢いよく突いてしまわれたのです。突かれた男性は痛そうに表情を歪めながら地面をのたうち回っていました。


「お前、ハル……で合ってる……よな?」


 助けてくれた男性の方は私が持っていた機材の入った袋を指差しておられました。


「はい、そうですが……」


「……ハルお姉ちゃん!本物だ~」


 傘を持ったまま、助けてくれた小柄な女の子が私に抱き着いて参られました。


「もしかして、リアル・ワカナちゃんですか!?」


「そうだよ、あっちがリアル・カズ兄」


「はわわ……カズさん、助けていただいてありがとうございました!」


 私は照れくさそうに頬を指でかいているカズさんにお礼を申し上げました。


「ああ、まあ、大したことしてないからな。さて、この件は終わりにしてレンタルスペース行くぞ。無事合流できたわけだしな」


 カズさんが歩き出したのに合わせて、私とワカナちゃんも歩き出しました。駅から5分ほど歩くと、レンタルスペースに無事に到着しました。


「ここだ」


 私たちはカズさんと借りた部屋まで移動して中に入りました。中はフローリングで光を浴びてキラキラ輝いてました。入って手前にはトイレとバスルームがありました。


「……カズ兄。私、シャワー浴びてくる。来る途中で汗かいちゃったし」


 そう言ってワカナちゃんは駆け足でバスルームへ入って行かれました。


「俺たちは先に奥の部屋でくつろいどくか」


「そう……ですね」


 台所を抜けて奥の部屋に入ると、ソファとテレビ、小さめの机と椅子が置いてありました。


「わあ、奥にバルコニーまであるのですね!」


「ああ、今日はそれが必要だからな」


 ニコリとそう言って微笑むカズさんの言葉の真意が読めませんでした。


「ここ、何かで使うのですか?」


 私がカズさんに尋ね返すと、カズさんは「花火を見るからな」とだけ。花火と聞いてハッとなった私なのでした。

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