第20話 潜伏
「キャーッ!」
そんな悲鳴が私たちのいる洞窟まで響いて参りました。
「ユーカさん!?」
私は思わず取り乱してしまい、勢いで洞窟を飛び出してユーカさんの悲鳴のあった方へ行こうとしてしまいました。
ですが、カズさんが左手で私の行く手を遮って静止してくださいました。
「ハルお姉ちゃん。一度落ち着いて」
私はワカナちゃんの言葉を聞いて、徐々に落ち着きを取り戻すことが出来ました。
「今の悲鳴は……」
「ああ、近いな。この洞窟のすぐ近くだろう。もしかすると、他のパーティに攻撃を受けたのかもしれないな」
カズさんはあごに手を当てながら冷静に起こったであろう出来事を分析しておられました。
「何にせよ、今は下手に動かない方が良いだろうな」
「……でも、カズ兄。ここが見つかるのも時間の問題」
そうなのです。カズさんの言う通り、外の状況も分からない内に下手に動くのも危ないです。
でも、このままじっとしていても見つかるというワカナちゃんの意見にも一理アリ……どっちを取っても危険であることは変わらないです。
「あの……いっその事、入り口を崩してしまわれるのはいかがでしょう?」
私がそう言うと、お二人ともキョトンとした表情を浮かべておられました。
これがリアルであれば、空気が入らなくなったりして窒息……なんてこともあり得るかもしれません。
ですが、ここは
ダメージが現実に反映されることも無いですし、空気ボンベは無くてもアイテムを使えば水に潜ることができるような世界です。
つまり、洞窟の入口が塞がってしまっても実際に死ぬわけではありません。
なので、洞窟の入口を崩して埋めてしまっても良いのではないかと思うのです。
私はこの事をお二人に説明しました。
すると、二人とも「今はこれに懸けるしかない」とおっしゃってくださいました。
カズさんが身体強化魔法を発動させて洞窟の入り口付近の天井に拳を叩き込むと、一気にヒビが入り入口辺りが崩壊しました。
そして、洞窟そのものが崩れないように私が氷魔法で凍結させて何とか崩落は防ぎました。
しかし、凍結の効果はそう長くは持ちません。効果は3分程度。それが経つたびに何度も氷魔法を発動させたために私は魔力がドンドン減っていきました。
そして、最後の氷魔法。そろそろ、カズさんも外に出ても大丈夫だろうとおっしゃるので、カズさんが身体強化魔法で慎重に入口まで岩石を砕いて進みました。
私たちが外へ出るとワカナちゃんから、イベントの残り時間は3分もないことを教えてもらいました。
私たちは話し合って、今回のイベントは優勝するのはもう困難なため、今あるポイントを奪われないように守りに徹することに決断しました。
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