18.

 美味しい美味しいと言ってあっという間に粥を食べ終わり、僕が入れたお茶をたくさん飲んですぐにまた眠ってしまった。

 僕は粥の入っていた食器やお茶を入れたコップを洗って、清也が脱いでぽいと投げたジャケットをハンガーにかけて吊るしておいた。

 僕、この人の家でなにしてるんだ……。

 そう思ったとき、それを感じたかのように突然清也が起きた。


「ごめんまた寝てた。もう帰っていいよ、またあとでお礼させて」


 ぽやっとした彼の顔を見たら、僕がずっと聞きたいことを聞かずに我慢しているのがばかばかしく思えてきた。


「ねえ、清也さん」


 僕は清也のベッドの横に座って、声をかけた。


「あなたは、光穂のこと好きなんですか?」


 彼の瞳が明らかに揺れる。


「いやそんな風には思っていないよ」


 と少し間が空いてから言った清也に対して、僕はすぐにもうひとつ質問をした。


「じゃあ、先生?」


 今度も少しの間はあったが、先ほどより驚きがないせいか早く返答がきた。


「それも違う」

「ふーん、そうなんだ」


 僕は自分の頬を手でむにむにとつまむ。


「逆に君は光穂ちゃんのことが好きなの?」


 清也は大人の余裕のようなものを漂わせながら尋ねた。

それは質問というよりも“確認”というニュアンスだった。


「はい、好きですよ」


 僕はきっぱりと宣言しておいた。

 清也が光穂のことを好きではないと聞いて安心したはずなのに、なんだか不安だった。

 彼の熱もだいぶ落ち着いてきたので僕は夜8時くらいに家に帰った。


 翌日、光穂が笑顔で話しかけてきた。

今さらなのに清也に光穂が好きだと宣言した後なのでなんだか気恥ずかしい。

いつもより意識してしまって、光穂ってこんなに可愛かったっけ、なんて思った。


「あのさ」


 光穂の笑顔を見て僕は言おうと決めた。


「昨日学校で清也さんに会ったんだけど、熱出しちゃってたんだ。昨日は僕が看病したんだけど、光穂行ってあげたら?」

「え、そうなの。じゃあ今日行こうっと」


 好きな子を自分とは反対の方向に向かって背中を押すなんて僕もばかだよな……。

 でも光穂は清也といるとき楽しそうで、僕は光穂の楽しそうな表情を見るのが好き。

だから僕が光穂の背中を押すのは当たり前のことだと思うのだ。

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