ダンジョンで『スキル屋』はじめました
佐久山
プロローグ
一旦最後の戦い
「ーー何回お前に倒されればいいんだよ!」
ダンジョン攻略10周目。いや、もっといってるのかもしれない。
そのせいか、ついにラスボスが文句を吐き捨てた。
俺との戦いで弱っているラスボスはコロンと仰向けに転がっている。黒髪赤目の人型の男で禍々しい角が頭から2本生えていて漆黒の翼を持っているその見た目はRPGに出てきそう。
「でも、死にはしないからいいだろ?」
俺は仰向けで倒れているラスボスの隣に座る。
致命傷は負ってはいないが、たぶん立てるまで回復するのに時間がかかるだろう。
他の敵ならHPが0になった瞬間気絶をして半日は動けなくなるがこのヒトのタフさは異常で気絶どころか普通に口も聞ける。
本当にHP0になってるのか疑いたくなるけど微かに手足が震えてるからそれなりのダメージは受けてるみたい。
「なぁ、お前。レベルなんだ?」
「俺?」
質問に答えるようにパッと真上に手を翳すと空中にスクリーンが現れる。
【和泉(いずみ)悠真(ゆうま)】
性別 : 男
年齢 : 16
ジョブ : チャレンジャー
レベル : 10000
スキル : ※エラー
俺が手を引っ込めると映像が消えた。
「だってよ」
ラスボスの方を見ると口をパクパクさせながらスクリーンを出していた所をいつまでも凝視している。
餌待ちの鯉みたい。
「なぁ……オレを攻略できるレベル知ってるか?」
「んー……990レベで確実だよね?」
「そうだよ! なんだよ10000って! しかもスキルエラーってなに!?」
薄暗い部屋の中に木霊するくらいの大声を上げながらもう回復したのか立ち上がった。
あ、立った。回復するの早いなぁ。いいなぁ。
「道中の敵とか中ボスとか絶対遭遇するように行ってたからレベルが上がっただけだよ」
「じゃあ、スキルのエラーは?」
「スキルがありすぎて、表示できないみたい」
たははっと笑うとラスボスは顔を引き攣らせてドカッと俺の前に胡座をかいて座った。
立ったり座ったり落ち着きのないヒトだなぁ。
「お前、もう来るな。オレのメンタルがやられる」
「でもさ、君も強すぎて倒せないって他のチャレンジャー言ってたよ?」
「5秒で倒した相手にそれを言うか? 今までで最速記録でたな。おめでとう」
こんなに感情のこもってない「おめでとう」は生まれて初めて聞いた気がする。
不満そうな面持ちのラスボスに笑みを向け今度は俺が尻と足を叩きながら立ち上がる。
「ま、安心してよ。もう俺は君と戦わないからさ」
「どういう事だ?」
「面白そうなスキルをゲットしたんだ。だから、それを使ってスローライフを送ろうと思ってるんだよ」
「スキルを使ってスローライフ?」
余程意味わからなかったのか間抜けな声で聞いてくるラスボス。
俺は大きく頷いた。
「そう! それを使って君のいる階に店を構えようと思ってるんだ。今日はその挨拶にって」
「挨拶ついでに倒しに来るな。メンタル持たんわ」
「それじゃあ、これからも直接的な敵にはならないけどよろしくね〜」
俺は手をヒラヒラさせながら半ば強制的に会話を終わらせラスボスを置いて部屋から出ていった。
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