6駅目 高円寺

 彼女とは、コンパで出会った。

 彼女は、何にも興味なさげで、サラダをつつくばかりだった。彼女も強引に誘われたクチだろう。どうしてか、そんな彼女のことを愛おしいと思った。


 ただ、彼女の傍にはすでに別の他人がいて、彼女もその他人には興味を持っているようだった。

 勝ち目がないとは、解りつつ、LINEを交換し、彼女とは2人で飲みに行くまで仲良くなった。高円寺の古着屋でバイトをしてることを知り、彼女はよくそこまで遊びに来てくれるようになった。南口には、いくつも古着屋があるが、一際尖っているバイト先は彼女には似合わなかった。でも、彼女が来てくれるだけで嬉しかった。


 バイトが終わり、彼女と飲みに行くのがいつもの流れになった。居酒屋がいくつかある通りに目当てのやきとん屋を見付ける。彼女はここのやきとんが好物だった。


 話す内容はその他人のことだけで、入る隙間さえ与えてくれない。彼女と会う時間が1秒でも長く続くことを望みつつ、その他人と上手くいかなくなることを願う。そんな自分が嫌いになりそうだった。


 1ヶ月もしないうちに案の定、彼女はその他人のモノになった。

 それでも、彼女と2人で過ごす時間は減らなかった。前は、オシャレなランチなんか食べに行きたいと言わなかったのに、わざわざ並んでまで人気のお店にランチに行こうと連れ出されるようになった。

 料理も作るようになったらしい。手の込んだお菓子まで。バレンタインの1週間前に呼び出されて試作品の感想を求められた。


 その他人の影響なんでしょ?



 数年後、彼女はその他人に振られた。見るからにボロボロで笑顔が消えていた。夜中に何度か泣きながら電話してきたこともある。頼られるのが嬉しかった。その度に彼女をいつも同じ文句で家に呼ぶ。

「今日はウチに来て、映画でも観ようよ。TSUTAYAで借りてくるから。ポップコーンも買ってくるわ。」

 彼女を誘うとすぐに家まで来て、2人でホラー映画を見た。明日は、新作を映画館で観る約束をして眠る。


 彼女の寝顔は、お世辞にも綺麗とは言えないがどこか愛嬌がある。ふっくらとした頬に軽くキスをする。

「好きだよ、ずっと。」


 あいつじゃなくて、私にしなよ。


 翌朝、目覚めた彼女は、心做しか元気になったように思う。

 映画を観て、近くのカフェに入る。話は止まらなくて、高円寺に戻って適当に居酒屋を選び再び話す。やたら派手な髪色の店員が動き回っている。彼女は、見向きもせずじっと私の目を見て話す。


「芽衣、私の事好き?」

 思っていることがつい言葉になる。

「好きだよ!1番の親友じゃん!」

 笑顔で答える。


 やっぱり、彼女の恋人にはなれないんだ。そんなの始めからわかっていた。私は、彼女を笑顔に出来るはずなのに一生選ばれない。理由はただ1つ、私が女だから。


 彼女の笑顔は私の心を深くえぐる。

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