第82話-闇-

 午前二時。草木も眠る丑三つ時か。

 またおかしな時間に目が覚めてしまったものだ。


 いつもなら一度寝付いてしまえば朝までぐっすり眠れるというのに。

 もう一度夢の世界へ戻るべく目をつむっていたが、一向に眠りに落ちる気配が無い。


 むしろ、目が冴えてきてしまった。


 仕方ない、水でも飲むかとベッドから足を下ろしたその時。


 ムニッ。


 何か柔らかいものを踏んずけて、私は思わずベッドの上で飛び跳ねた。

 なになに!?なんなのさ今のは!!


 一瞬触った感じは、あったかいスライムみたいな……?

 踏んだ時少し動いたような気もする。

 でもペットなんか飼ってないし……。


 足が濡れている様子は無い。

 何か部屋に置いていたっけ?


 そう思いながら再び、今度はさっきと少しずれた場所に足を下ろすと、今度こそ冷たいフローリングが足に触れた。

 ほっと一安心して両足を床に着けて立ち上がる。


 そろそろと慎重に一歩ずつ踏み出しながら、なんとか電気のスイッチが付いた壁までたどり着く。

 明かりをつけて部屋を見渡してみるが、それらしいものは何も見つからなかった。


 どころか、ベッドのそばには、見慣れたサイドテーブル以外何も置かれていない。


 さっき自分は一体何を踏んだのか。

 寝ぼけて何かを勘違いしたにしては、リアルな感触が残っている。


 私はもう一度ベッドに戻る気にもなれずに、朝までテレビを見て過ごした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る