第48話-死神-
……修也はそれが言いたかっただけでしょ。
まあいいや。
次は僕の番だね。
死期が近くなったら死神が見える、みたいな話があるでしょ?
実際に、見た人がいるらしいんだよ。
その人の話では、黒いスーツに黒いネクタイを締めた男の人がいきなり家に来て
「私は死神です。あなたはあと五日で死にます」
って言われたらしい。
最初は信じてなかったけど、色々質問をしていくうちに、自分のことは何でも知っていたこと、鍵のかかった部屋にいきなり現れたこと、目の前で壁をすり抜けて見せたことで本物だって確信した。
そしてその人は、ブログに記事を書いたんだ。
「死神に寿命を宣告されたので回避する方法募集」ってね。
その一風変わった記事は、一部で少し注目された。
管理人はその記事にこれまでの経緯を詳しく書き込んで、コメントでもらった対策を全て試すと宣言したんだ。
そして、実際に試したことと結果を一つ一つ記事にしていく。
お祓い。
お守り。
死神を追い出す。
踊る。
身代わり人形。
それらを試す様子を、管理人は明るく、面白おかしく記事にしていったんだ。
コメント欄もみんな「管理人の企画」だと思って、どんどんただの悪ふざけみたいになっていく。
一日に何度も更新される的外れな死神対策の様子に、コメント欄はどんどん賑わっていった。
そして五日目。
午前中に記事を三つ更新したところで、その後の投稿はぱったりとやんだ。
そして、それからもそのブログが更新されることは無かった。
管理人は、ネットの世界からそっと姿を消したんだよ。
とはいえ、ネットの投稿者が失踪するなんて別に珍しいことじゃないよね。
飽きたらいつでも消えちゃえる世界なわけだし。
ただ、企画が一番いいところに来たのにここでひっそりと辞めるなんて不自然じゃないかって声もあった。
ネタで五日後に死ぬなんて言ったから、それっぽく演出したって声もあった。
いつか戻って来るかもしれないし来ないかもしれない。
そんな状態の中で、やがて数年たって、この話は忘れられていったんだ。
僕はね、管理人は本当に死神に会ってたんじゃないかと思うんだ。
そして自分が死ぬまでの過程をエンタメにした。
一人の投稿者としてね。
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