第43話-座敷童-

 俺は今年東北に旅行に行ったんだけど、その時旅館のロビーで知らない人とちょっと話したんだよな。

 その時の話がまた何とも不思議でさ。


 その人は、穏やかそうなおばあさんだった。

 素朴な感じの格好をしてたんだけど、昔はお金持ちだったらしい。

 つっても、子供の頃らしいけど。

 親が企業の社長で、豪邸に住んでいたとか。


 両親とも家族で過ごすことが少なくてよく仕事をしている人だったし、子供の頃のおばあさんは親の言いつけで同世代の子供と遊ぶことも無かったから、友達もいなかった。


 だから、小さい時には弟とよく遊んでいた。

 弟しか、常に周りに人がいなかったんだな。

 お屋敷の中に使用人はいたけど、遊び相手にもなってくれないし。


 おばあさんが十歳の頃。

 親の会社が倒産して、家はあっという間に落ちぶれてしまった。

 そして、その直後に弟はいなくなった。


 そのことを必死に訴えても、両親とも言うんだ。


「弟なんか最初からいなかったでしょ」って。


 その後も色々大変だったんだけど、大人になってから就職して結婚して、おばあさんは普通に幸せに暮らしてるらしい。


 もしかしたら、あの子は座敷童だったのかもって、おばあさんは言ってたよ。

 座敷童のいる家は栄えるけど、出ていくと落ちぶれるって話があるからな。


 ……え?あー、確かに。

 落ちぶれてから弟が消えるんじゃ、順番が逆だな。


 ……て、ことは…………?





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