第13話-殺人犯の自供-

 とある逃亡中の殺人犯が、警察署に自首してきた。

 さっそく刑事が取り調べをしたところ、なんでもこんなことを言っていたらしい。




 いや、その、俺の彼女がまあ……俺の友達と、デキてたんですよ。

 そのせいで言い合ってて、それで……それで、カッとなって刺しちゃったんです。包丁で。

 場所が悪かったみたいで、すぐ動かなくなっちゃって。


 頭に血が上ってたから、最初はいい気味だなんて思ってたんですけど、だんだん冷静になると、恐ろしくなって来ました。

 人一人殺してるわけですから。


 慌てて死体を車に積んで、隣の市の山まで行ったんです。

 マンションから一時間くらいのところです。

 マンションの三階から死体を担いで降りました。


 今から考えるとそこで見つかったらどうするんだって話ですけど、晩飯時だったからか、なんとか人に会わずに済みました。

 焦ってたんですね。


 それで、途中でホームセンターに行ってスコップを買って、山に穴を掘ったんです。これ、レシートです。

 すっかり日も暮れてましたから、人に見られるような心配はありませんでした。


 絶対見つからないようにって、自分がすっぽり入るくらい掘って、その中に彼女を、座るような姿勢で埋めました。


 そこで少し安心して山を下りて、車に乗ろうとしたら、後ろから視線を感じるんです。

 振り向くとそこには……ええ、彼女ですよ。


 生きてたのかって最初は思いました。

 でも結構深くに埋めたんですよ、俺。

 しかも刺されて血まみれになってたはずなのに全く血なんか出てないし。泥もついてないんです。

 血みどろで出てこられるよりも恐ろしいもんですね。


 しかも、真っ暗な中だってのに、彼女の姿だけはハッキリと見えるんですよ。

 目線を上げると、真っ青な彼女の顔。


 慌てて車に飛び乗って、逃げるようにマンションへ引き返しました。

 でもその途中にもね、いろんなところにいるんです、あいつが。

 街角だったり、コンビニの前だったり、向かいの歩道だったり。


 とにかく、運転中にふと目線をやったあらゆる場所にぼーっと立ってて、こっちを見てるんです。

 何をしてくるわけでもなく、ただじっと。


 元はと言えばお前が悪いのに、なんでそんなに恨まれなくちゃいけねえんだと思いました。


 なんとかマンションの駐車場に車を入れて、一息つきました。

 で、降りようと思ってルームミラーを見たら……。

 ええ、いました。後部座席にちょこんと座ってるんです。


 俺は叫びながら、転がり落ちるみたいに車を降りましたよ。

 いい歳して涙が出そうになりながら、這うように階段を上がりました。


 なんとか部屋にたどり着いて、玄関に飛び込むとすぐに内側から鍵を掛けました。

 頭のどこかではどうせ無駄だと分かってましたけど、そうせずにいられなかったんで。


 振り向くと、まあ案の情です。

 あいつが立ってるんですよ。

 丁度俺がアイツを刺したところで。

 こっちをじっと見てるんです。


 そこで心が折れちゃって、ここに来たんです。


 で、ここからが大事なんですけどね?

 しっかり説明も出来てるし、俺今すごく冷静なの、分かるでしょ?

 頭がおかしくなってもないし、支離滅裂なことを言ったりもしない。


 その上で、聞いてほしいんですけど。


 今、あなたの後ろに俺の彼女がいるんですよ。







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