第7話‐七人ミサキ‐
話を終え、一同が少し疲れたような表情を浮かべる。
百物語アプリに表示されるロウソクはまだまだ残っており、画面いっぱいに炎のような灯りが揺れていた。
画面の上に表示されている残りのロウソクの数は「九十四」。
怪談を語るのには意外と時間がかかり、気力も消耗する。
一同は、すでに百物語を始めたことを後悔し始めていた。
「なんか、意外とだるいな」
修也がぼそっと呟いた。
スポーツマンの修也は、熱しやすく冷めやすい所が有る。
最初は楽しそうにしていたのに既にこの様だ。
「まあまあ、とりあえずもう一周くらいはしようぜ」
逆に、最初は乗り気でなかった涼は興が乗ってきたようで、落ち込み気味の修也の叩きながら笑っている。
話し終えた直後こそ疲れたようにしていたものの、話を聞く側に回ってしまえばしばらくは菓子を食べているだけでいい。
「んー、そうだな。じゃあこういう話はどうだ?」
少し調子を取り戻した修也は小さくニヤリと微笑むと、ぽつぽつと話し始めた。
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丁度七話目だし、七にまつわる話をしようか。
七ってラッキーセブンとかでいいイメージだけど、こんな不気味な七もあるんだよ。
七人ミサキっていう妖怪なんだけど。
こいつらはいつも七人セットの亡霊で、出会うと病気になって死んじまうらしい。
で、死んだら七人ミサキの仲間に加えられて、元々いた七人の中から一人が成仏していく。
そうやって常に七人組になる、みたいな。
まあ気色悪い妖怪なんだけど。
もっと気色悪い話もあってさ。
この七人ミサキっぽいのを見ちゃったって人がいるんだよ。
高校の時の先輩なんだけどな。
俺高校の頃は陸上部だったんだよ。
部活の合宿で、海の近くの合宿施設にみんなで泊まっててさ。
昼間はひたすら練習して、それから日が暮れて晩飯の後に、その先輩はちょっと散歩ってふらふらっと外に出てっちゃったんだよ。
で、二時間後くらい。
皆が風呂入り終わった頃に真っ青になって帰ってきたんだ。
なんかヤバいのに追いかけられたって、そうやって騒ぐんだよ。
先輩が散歩してた時。
砂浜に沿ってずっと歩いてたら、岩場みたいになってるところを見つけたらしい。
で、その岩場の向こうから、山伏みたいな恰好をした七人くらいの男たちがこっちに向かって来ているのが見えた。
なんとなく不気味だったんで引き返そうとしたら、その集団の先頭にいたやつが叫び出した。
まずいと思って、逃げようと砂浜を走り出す。
途中で後ろを振り返ると、さっきの山伏が走って追いかけてきてるのが見えた。
直感的に、捕まったらまずいと思って、それから振り返らずに走り続けたらしい。
十分くらい歩いてただけだし、走ってたらすぐに施設に戻れる。そう思ってたんだけど、砂に足を取られて思うように走れない。
で、ここからさらに訳分からないんだけど、どれだけは知っても砂浜から抜け出せないんだよ。
まるでさっきからずっと同じところ走ってるみたいにさ。
振り向くと、山伏はさっきと変わらないくらいの間隔のまま追いかけ続けてくる。
もう体力も無くなってきて、もう駄目だ、走れない!と思った瞬間、足がふらついて、波打ち際にばっしゃーん!
で、慌てて立ち上がると目の前に俺達が泊まってた施設の建物があって、七人ミサキは消えていたと。
しかも、体感では散歩のために外に出てから三十分も経ってないくらいなのに、帰ってきたら二時間後。
その先輩訳分かんなくなっちゃってその日はすぐに眠っちゃった。
で、最後に。これが一番不思議なんだけどさ。
その先輩、結局そのあと病気にもならなかったし死にもしなかったんだけど。
それ以来、八人以上で競走する時、種目やメンバーに関係なく、必ず八位になるっていう……。
まあつまり、前に七人いるんだよな、常に。
死んで妖怪になるほどじゃないけど……これも立派な呪い……だよな?
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