第8話
ダンジョン化していたのは、かなり大きい和風のお屋敷だった。
昔からある家で、相続するたびに縮小しているけどそれでもまだ立派な屋敷だ。この辺そういうの多いけど、その中でも1番でかい家だったように記憶している。
3mくらいある塀の周りを1周するだけで10分近くかかったが、門は閉ざされていて
「スケルトン、そこに立て。踏ん張れよ」
仕方がないので、スケルトンを梯子代わりに登ることにした。
骨盤に足を乗せ、壁に手を付きながら肋骨、肩甲骨に足を乗せると塀の上まで手が届いた。天然の梯子だな。
ひょこっと顔を覗かせて中を確認すると、二足歩行の豚やら二足歩行の狼やら四足歩行の猪……あ、これは普通か。角が生えた兎に長い尾羽がやたらカッコイイ鳥、よくよく見れば全身緑の蛇なんかもいる。
ダンジョン化の影響か庭には異常に木々が生い茂り、屋敷をは半分以上が隠れている。
「……これは無理だな」
少なくとも、今のままでは。
とりあえず、道に落ちていたものなんかをひろって売って拾って売って………車や家のうちいくつかも持ち主が死んでしまったのか売却が出来た。
ショップでDPを確認すると、3億7千万程溜まっていた。
「ホントのチートは”魔王”よりこの有り余る物資だよな……」
足の下でスケルトンが、それな!とでも言うかのようにカタカタと笑った。
モンスターに気をつけながら家まで戻り、早速迷宮管理を発動する。
「【迷宮管理】……【迷宮拡張】」
目の前に半透明の板が現れる。
『拡張する範囲を指定してください』
見ると、縦線と横線で正方形のブロックに区切られた地図が表示されていた。
指を滑らせると、それに合わせて地図も動く。
試しに正方形を1つタップして見ると、
『現在のダンジョンと隣接していない土地は選択できません』
考えて見れば当然だな。
拡張機能で飛び地ができる訳が無いか。
青で塗られた我が家の敷地に隣接するブロックを長押しし、そのまま指を滑らせると、思った通りに一括選択が可能だった。
この板、スマホの操作によく似ている。
画面下部には【拡張】ボタンや虫眼鏡にプラスマイナスの記号が書かれたズームボタン、地図から航空写真に切替えるボタンもあった。
「うちで大体30坪くらいだから……1個10m×10mってとこか。1ブロック1万DP、日本が38万平方キロメートルだから38兆…………」
うん、いくらなんでもすぐには無理だな。
だが、1万で拡張したエリアから1万以上の物資を売却すれば理論上世界征服も可能。
とりあえず、この辺り一帯にダンジョンを広げてみようか。
手始めにうちを中心に上下左右5ブロック程度を選択して【拡張】を押したが……
『選択範囲内に中立/敵対状態のモンスター/人間が存在します』
『拡張できません』
嘘だろ、おい。
つまり、ダンジョン拡張はそこに居る人間やモンスターを全部倒すか追い出すかしないと使えないのか?
《【テイム】【隷属】等の手段で中立/敵対の状態を解除すれば可能です》
なるほど。
「そりゃー自分の領地にするんだから敵の排除は必至なんだろうけど……マジかぁ」
いきなり目論見が外れてしまった。
因みに、この家周辺に人が残っていないのは確認済みである。要するに”モンスター/人間”というのはただの定型文で、逆に言えば”中立、敵対状態のモンスター、人間が居る”というのが隣接区画の拡張不可の条件の全てで…………要するに虫や動物なんかがいるのは問題ない、という事だろう。
「予定とは順番が違うけど……召喚、スケルトンジェネラル×5」
紫の魔法陣が消えると、2m半はある巨躯の人骨が5体。
リビングは我が家で1番広い空間だが、スケルトンジェネラルによる圧迫感が半端ない。
「……外に出て待機」
身を屈めながら小さな扉をくぐるスケルトンジェネラルの哀愁漂う背中を眺めながら、後について庭に出た。
家の正面の道路にモンスターが居ないことを確認し、ダンジョン化する。
(これだけ広けりゃ100体くらい入るよな?)
「召喚、スケルトンナイト×50、ダンジョン外で待機」
その後も、まとまった数を召喚し、『ダンジョン外で待機』と命令していく。
何度か召喚を繰り返した結果が……
Cランク スケルトンジェネラル(1800万)×5
Dランク スケルトンナイト(220万)×50
Eランク スケルトンアーチャー(12万)×100
Eランク スケルトンウォリアー(35万)×100
Eランク スケルトンソルジャー(27万)×100
Eランク スケルトンメイジ(37万)×100
Eランク スケルトンシーフ(19万)×100
Eランク スケルトンライダー(12万)×100
Eランク スケルトンホース(20万)×100
Fランク スケルトンテイマー(4万)×50
Fランク スケルトンバード(1万)×50
Gランク スケルトン(1000)×143
総計3億6464万3000DP
残り、1205万8452DP
先に召喚した2体を含め合計1000体のモンスターを召喚した訳だが、これにはちゃんと訳がある。
まず、ステータスの上昇だが。
召喚コスト(合計):眷属ステータス(平均)
眷属ステータス(平均):俺のステータス上昇値(平均)
このふたつは比例関係にある。
数値は上50:1、下が10:1。
つまり、合計の召喚コストとステータス上昇値は500:1くらいで比例関係にある。その内訳はステータス上昇値の各項目への振り分けのみに関与する。
つまり、3億の1体を買おうが10DPを3000万体買おうが、平均ステータスは変わらない。
ならBランクを1体買った方が良いかと言われると、俺はそうは思えなかった。
広域展開と圧倒的に強いモンスターに遭遇した時のリスクの分散を優先し、Bランクを数体より今必要なのは1個の軍団だと判断した。
……もっとも。
「スケルトンジェネラル3体はそれぞれ5分の1を率いて周辺のモンスターを殲滅しろ。死骸はできる限り持ち帰れ」
これから、有り余るほどのDPが入る予定なのだ。
大して悩む必要は無いだろうと、半ば適当に召喚したと言えばそれまでなのだが。
半分以下になった骨軍団に、更に命令を下す。
「残りの半分で家を警備しろ。ネズミ1匹も見逃すな。他は着いてこい、ダンジョンに向かう」
ダンジョンコアと俺の命が同期している、なんてテンプレ的な設定はなかったが、コアが破壊されれば再びダンジョン化の手間が増える。
(……やっぱり、いずれはダンジョンの数を増やすべきか?それとも1個に集中して万全の警備をしくか……)
後で考えようとばかりに頭を振ってステータスを開き、秋斗は思わず口角を吊り上げた。
=====
黒木 秋斗
人間
魔王
Lv.6
HP:4025513
MP:2760510
筋力 825310
防御 604595
知力 776400
俊敏 954201
器用 544414
魔法抵抗 625005
=====
たった数時間の成果が、そこに記されていた。
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