3.しげる(1)
はぁ~。
月曜日は憂鬱だ。何時になっても満員電車と言うのは慣れないものだ
いろいろな電車で通勤してきたが、この路線はまだましな方だ。
満員と言っても、車内で立ち位置を確保できるくらいの余裕はある。
入り口付近で立ち止まる人間が居なければ結構ゆったりとしているんじゃないかと思うこともある。
それでも満員電車は苦手だ。
会社勤めを始めて30年。車内ではそれなりの位置に上っているとは思うが、満員電車ではそんなことは関係ない。
周りには自分のことを知らない人間ばかりだ。
知らない人間ばかりというのは気楽な面もあるが、やりにくいこともある。
朝の通勤電車に乗るときはどうしても周りのことを考えてしまう。
今日も例に違わず、そんなことを考えながら電車に乗り込んだ。
いつもより少し混んでいる感じだ。間際に乗り込んできた男が押し込んでくる。
すいている場所を求めて体を少しずつ車内へと滑り込ませていくと、扉の脇でゲームをしている男の所まで流れてきてしまった。
いつものように場所が落ち着いたところで足場を固めるために微妙な調整をしていると、後ろから微妙な圧力を感じる。
どうも後ろは女性らしい。女性は小さいから満員電車は大変だと思う。男の間に埋もれてしまうと周りも見えず息が詰まってしまうんじゃないのかといつも気の毒に思う。
あまり、後ろに影響が及ばないように気をつけながら位置決めを行ったが、やはり気になっているようだ。
「***に****の***や**。」
「**も**こ***らい*****り****」
始まった。
満員電車が苦手な理由は単に混んでいるからだけではない。
私の特殊な体質が満員電車という状態を最悪のものにしているのだ。
「もそ***ごか****うさを****ちまう******」
「****うご***でほ***」
あ~。どんどん入ってくる。
そう、私は接触テレパス。触れ合っている人の意識が自然と流れ込んできてしまう体質だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます