中学3年生 春 1
親にはやりたいことがあると言い、通信制高校に通うことにした僕は、「高校受験だ!」と意気込んでいるみんなには悪かったが、正直お気楽だった。
そんな僕の前に彼女は現れた。そう、石垣瑠璃である。もっとも、現れたと言っても中学3年生で初めて同じクラスになったというだけで、僕は彼女を知っていた。彼女を知ったのは中学
一年生の最初のテストのとき。「国語のテストで満点をとったやつがいる」と噂になったのだ。そのとき、僕はなかなか勉強したにも関わらず、七十点台。正直絶句したのだが、それからも毎回テストの度に、「石垣が満点をとった」という噂は耳にした。けれど、それ以外のテストの点が噂になることはなかった。僕も少し張り合ってみようという気を起こしたこともあったが、ついに九十点台に乗ることすらなかった。
あっという間に一方的にライバル視するような二年間が過ぎ、気がつけば受験シーズン、中学三年生になっていた。さらに巡り合わせのように石垣瑠璃と同じクラスだったのだ。始業式の日、彼女を一目見たときに(それなりにクラス数が多い学校だったので名前は知っているが会ったこと、話したことがない、なんてのはザラだった)まず僕は敗北感をおぼえた。てっきりクラスの隅にいるようなガリ勉だと思っていたのだが、学級委員になるようなガラでこそないものの、クラスの心臓と言っても過言でないくらい、人と打ち解けるのが早く、クラスの真ん中にいた。さらに、容姿が特別と言えるほどではなかったが、男子からも人気があった。事実、僕の親友の鍋屋静人も「石垣さんはオレのモンだからななんて言ってアタックをかけていた」なんて言っていた。
そして彼女と話すことはなく、日々だけが過ぎていった。
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