第26話 王子③
■桜視点
そしてボクは、凛くんと一緒にあのバカ女をギャフンと言わせることになった。
凛くんに勘違いされて、彼は少し怒ってしまったけど、誤解が解けてよかった。
もし誤解されたままだったら、ボクもう引きこもっちゃうよ。
それで、そのための作戦会議を彼のバイト先ですることになったんだけど、はあ……制服姿の彼、カッコよかったなあ……。
だけど、彼が着替えに行っている間、彼の従兄でマスターの大輔さんから、凛くんとの関係を色々聞かれた。ちょっと恥ずかしかった。
彼が戻ってきて、まず手始めに、あの男に女の子をあてがうことにするんだけど、凛くん曰く 、あの男は前髪を切ればイケメンだから、すぐに相手の女の子は見つかると言った。
そんな上っ面で見るような女の子どうかと思うけど、よく考えたら奏音がそうだから、ちょっと悶々としてしまった。
大体、凛くんのほうが何百倍も素敵なのに。
といっても、他の女の子達がそれに気づいちゃっても困るから、今のままでいいんだけど。
そして、肝心のあの男が引きこもっちゃったから、なんとか立ち直らせないといけなくて、RINEを送るために、凛くんはスマホを取りに控室に行ったんだけど……。
今度は大輔さんが真剣な表情で「凛太郎をよろしくお願いします」なんて言うもんだから、ボクは恥ずかしくて頷くことしかできなかったよ。
そして、凛くんがRINE送るんだけど、結局あの男からは返信がなかった。
とりあえずは、ボクは凛くんのRINEゲットできたから、良かったんだけど。
だから、凛くんとボクはあの男の家を訪ねるんだけど……一時間粘って出てきたのはあの男の姉で、口を開けば凛くんへの嫌味、そして、顔を覗かせたあの男は、凛くんを見るとすぐに罵詈雑言を浴びせかけた。
何も悪くない凛くんが、なんであんな言葉を受けなきゃいけないの?
心の底から許せなかったボクは我慢できず、あの姉弟を罵倒した。
そして、もう凛くんをあの二人の前に立たせたくなくて、ボクは凛くんの腕を引っ張り、あの場所から立ち去った。
だけど……ボクの所為で作戦がメチャクチャになっちゃった……。
ボクはそのことを凛くんに謝ると、逆にお礼を言われ、しかも謝られてしまった。
本当に、凛くんはもう……。
その後、凛くんの家で作戦会議のやり直しをしたんだけど、凛くんの妹さん……理香ちゃんも可愛かったなあ。
ただ、凛くんの匂いを嗅ぎたくて、興奮してベッドに顔をうずめてる姿を見られたのは失敗だった。
あれ、絶対に凛くん引いてたよね……。
そして、ボク達は次の作戦として、あのバカ女の浮気相手のクズの彼女、中原先輩を引き入れることにした。
早速接触を図ったボク達だけど、あろうことかあのバカ女とクズはサッカー部の部活が終わった後、一緒に下校したんだ!
本当にクズだよ! もうボク達の前から消えてほしい!
中原先輩は、実はクズの浮気に気づいてて、喫茶店で全てを語ってくれた。そのつらい思いも……。
だけど、大輔さんが親身になって先輩を諭してくれたおかげで、先輩の心は持ち直し、ボク達と一緒にあの二人を痛い目に遭わせることになった。
ただ、あのクズがひどすぎた所為か、その反動で先輩は優しくしてくれた大輔さんに絆されちゃったけど。
ま、まあ、凛くんの従兄だけあって人柄もよさそうだし、とりあえずは前に向けたからよかったかな、うん。
そして、ボク達は先輩とクズが別れるって噂を学校で流して、先輩をアクセサリーにしか思ってないクズを焦らせ、仲が良いアピールをするクズに、みんなが見てる前で先輩が全て晒すことにしたんだ。
その下準備も終わり、後はそれを決行するだけ。
その前日、ボク達は先輩の計らいでもらった有名テーマパークの一日フリーパス券で、デートをした。
ボクは嬉しすぎて、夜もなかなか眠れないし、デートに着ていく服も決まらないしで、待ち合わせ時間に遅れそうになっちゃった。
その分、凛くんにはすっごい褒めてもらったけど。
凛くんと過ごしたデートは最高だった。
もう死んでもいいとさえ思った……って、いやいや、これだけじゃ満足できないや。
そして、パレードが始まろうとした瞬間、ボクは……凛くんの心の声を聞かせてもらった。
こんな優しい凛くんが、傷ついて、でもがんばって、なのに責められて、それでも思いやって、苦しんで……。
ボクはもう我慢できなかった。
これ以上凛くんがつらい思いするなんて耐えられなかった!
だから、ボクは凛くんを強く抱きしめた。
「凛くんが自分を許せないなら、僕が許すよ。凛くんが堕ちるなら、ボクも一緒に堕ちる。凛くんは一人じゃない。いつだって、これからだってずっとずっと、ボクは君のそばにいるよ」
これは誓い。
ボクの、凛くんへの誓い。
そして、凛くんはボクの胸の中で、全部吐き出してくれた。
帰り道、凛くんから「全部終わったら、俺に時間くれる?」と言われた。
もちろん、ボクは「うん」って返事した。
次の日、ボク達は最後の仕上げ、あのバカ女とクズへの断罪をする。
だけど、ボクは朝早くに学校で先輩と待ち合わせし、バカ女の名前は出さないようにお願いした。
だって、凛くんは絶対に苦しむから。
先輩はボクの思いをくみ取ってくれて、言わないって約束してくれた。
先輩と別れて教室に入り、カバンを机に置いたところで、凛くんがやってきた。
今日は先輩とのことがあったから別々で、ってRINEしておいたし、いつもこんな時間に登校しないのになんでって思った。
だから、冗談半分に「ボクに逢いたくて慌てて来たんでしょ!」なんて言ったら、「正解」って……反則だよお。
お昼休み。
いよいよ、その時がやってきた。
予定通り先輩がやってくると、あのクズは調子に乗って彼氏ヅラしていた。
これから何が起こるかも知らずに。
そして、先輩から浮気の事実を突きつけられ、慌てて弁解しようとするけど、先輩に冷ややかに一瞥され、信じられないといった様子でその場で呆けた。
結果、クズは学校での地位も居場所もなくなった。
同じく教室内にいたバカ女も、名前こそ出されなかったものの、クズからは「興味がない」とはっきり言われた。
しかも、先輩ですら現場を目撃しているんだ。バレるのも時間の問題だろう。
これで、あのバカ女への仕返しは終わったはずだった。
だけど、ボクと凛くんが彼の家の近くの公園にいる時、あの女が現れ、あろうことかボク達に絡んできた。
その時には、バカ女は壊れていた。
あの後、バカ女はあの男の家に行ったけど、あの男からは絶縁宣言を突きつけられてしまったと語った。
そして、その原因は凛くんの所為だと。
もうこれ以上、凛くんに近づけたくない!
その一心でバカ女に啖呵を切ったけど、あろうことかバカ女は凛くんの想いを馬鹿にした!
だから、反対にボクはバカ女を思いっきり罵倒した。
すると、逆上したバカ女が手を出そうとしたけど、凛くんがそれを防いでくれて、最後はボクのために追い返してくれた。
そして。
「俺……俺、桜さんのことが好きだ。大好きだ。こんな俺だけど、桜さんにずっと傍にいてほしい!」
信じられなかった。
夢かと思った。
だけど、確かに凛くんは言ってくれた。
ボクのこと、好きだって言ってくれた!
ボクは嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて!
もう無理だった! 抑えきれなかった!
ボクは彼の胸に飛び込んだ!
すると凛くんはボクを抱きしめてくれた。強く、強く。
とうとうボクは、願いが……想いが叶った。
◇
立花凛太郎くん。
ボクの王子様。
これからずっと、ボクは君と一緒だよ?
だからね。
ボクが絶対、君を“あの男”から護ってみせるよ。
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