第29話 人魚・ローラの名を西洋史的に分析する

 本記事は、アメブロ2021年4月14日に私がアメブロの記事にて公開したものを、この度カクヨム用に再編集したものです。


 トロピカル-ジュプリキュアに出て参る人魚・ローラ君の名前についてであるが、なんだかなぁ、

「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」やら、

「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)」

すらすら書けたけど、これ覚える並のお話。

 そんなローラ君の正式名称を、わしが分析してさしあげよう。



ローラ・アポロドーロス・ヒュギーヌス・ラ・メール

Laura Apollodoros Hyginus La Mer


 ここで出た名を成す単語につき、それぞれ原語でまずは適示する。


ローラ 英語(スペリングの差異はともあれ、他言語にもみられる)

アポロドーロス 希(ギリシア)語

ヒュギーヌス 羅(ラテン)語

ラ・メール 仏(フランス)語


 これは、西洋の4大言語を重ねた、実に重厚なる名前である。そもそもセカンドネームが2つもあり、なおかつ貴族等を示す定冠詞まで入っておるからね。さすがは女王候補として生を受けた人魚さんだけのことは、ある。

 そこをまず、分析してみよう。


ファーストネーム

ローラ・・・英語圏を含めた西洋圏における典型的な女性名。

      ローレン(男性名)の女性版


セカンドネーム

アポロドーロス・・・

古代ローマ時代のギリシア人著作家。ギリシア神話の編纂者とも言われる。

ヒュギーヌス・・・

同じく古代ローマ時代のラテン語著作家。エジプトプトレマイオス朝女王クレオパトラのよき人アントニウスの天敵、オクタヴィアヌスこと初代ローマ皇帝アウグストゥスの解放奴隷で、パラティーノの図書館長に任命されたという人物。こちらもギリシア神話の編纂者だが、詩の注釈や農業・養蜂絡みの著作も多々あるらしい多作家。ただし、彼の著作はほとんど現存しない。


それから、これはファミリーネーム、すなわち名字にあたる

ラ・メール・・・フランス語で、「海」を示す。

        なお、「ラ(la)」は、女性名詞を示す定冠詞。

        cf:セーラームーンの「ラ・ソルジャー」と同一。


 さすれば、日本語表記上「ラメール」とするのは、厳密には誤り!

 そういう表記をしているサイトには、喝!もの。

 ヴェルダンの英雄であるフィリップ・ペタン元帥に引立てられて出世した、後のフランス大統領、

 シャルル・ド・ゴール Charles de Gaulle

の「ド(de)」も、これと同じく定冠詞のため、こう表記される。


 同じような例は、ドイツ語、イタリア語、スペイン語などにもみられる。

 第一次世界大戦のドイツ軍の英雄にして、ヴァイマル共和国大統領、

 パウル・フォン・ヒンデンブルク Paul von Hindenburg

 ドイツ語の場合は、von がこれにあたる。


 ファシスト政権下のイタリア陸軍元帥、

 エミーリオ・デ・ボーノ Emilio De Bono

 * イタリア語は、De も大文字表記する模様。


 フランコ死去(1975)・ボルボーン王朝復古後のスペイン首相、

 スアレス公爵アドルフォ・スアレス 

  Adolfo Suárez González、Duque de Suárez

 彼の名自体には定冠詞は発生していないが、彼は伯爵位を所持している。

 * de が、ここではその定冠詞に該当する。

 なお、スペインにおいては父方の姓が第1、母方の姓が第2に表記される。

 後のスペイン左翼政権の首班を務めたゴンザレス元首相は貴族ではないが、彼の場合は父方の姓がゴンザレスで、母方の姓はマルケスという。 

 フェリペ・ゴンサレス・マルケス Felipe González Márquez


 さて、ローラ君に戻ろう。

 厳密に言えば、フランス語の場合定冠詞はこのような小文字表記が通例。

 よって、


 Laura Apollodoros Hyginus la Mer


とすべきだと言われれば、そのとおり。


 さて、ローラ君のやってきたグランオーシャン(Grand Ocean)なる人魚の国であるが、こちらは西洋史的に彼女の名前から分析すれば、

 「メール朝(王朝)」

ということになるでしょう。


「ハプスブルク朝(神聖ローマ皇帝つながりね)」

「ブルボン朝(フランス王ルイ14世の系列。今のスペインにボルボーン朝として現存)」~ベネズエラ元大統領チャベス氏(故人)をどやし上げたスペイン国王陛下ファン・カルロス1世(現在は退位)は、畏れ多くも、太陽王ルイ14世の子孫なのであるぞ!

「ボナパルト朝(フランス皇帝・ナポレオンさんのとこね)」

「ハノーファー朝(現在の英王室ウインザー朝)」、

「ロマノフ朝(ロシアね)」、

「ホーエンツォレルン朝(プロイセンドイツ皇帝)」


高校の世界史で習うところで言うと、こんな感じや。

ちなみにわが日本の天皇家には、かかる「苗字」は、ない!

万世一系であるぞ!

その対義語は、「易姓革命」

中国の王朝や、西洋の王朝は、これにあたるのである。


 それにしても、ローラ君は、いい名前を付けてもらっておるのう。この人魚クン、平民宰相のゴンザレス元スペイン首相よりもいかつい名前、もらっとるがな…、いやマジで(苦笑)。

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