第15話 高橋ユニオンズ青春記 レビュー

この記事は、私が最初にアマゾンレビューに投稿(2012年4月)した記事です。

なお、諸般の事情により現在は非公開です。


高橋ユニオンズ青春記 白夜書房 2011年 長谷川晶一 著



(タイトル)    孤児つながりの、悲しくも心温まる物語


(記事本文)

わずか3年間しかこの世に存在しなかった、今や幻と言ってもいい球団・高橋ユニオンズ。


あの大投手・スタルヒンの最後の所属球団でもある。

戦前の巨人軍を描いた本に出てくるスタルヒン投手とは、似ても似つかぬほどの別人。

浜崎監督が、集まった選手たちのことを「ポンコツと呑兵衛の集団」と揶揄していたそうだが、当時のスタルヒンは、それをまさに地で行く(その両方の条件を満たす?!)ような、ベテラン選手になっていた。

しかし、彼もまた、一種の「孤児」であった。白系ロシア人の亡命貴族の息子として、無国籍のまま育ち、ついに国籍なきまま、日本社会の「孤児」のように生き、野球界を引退した後、間もなく、「事故」で死亡してしまった。

そしてまた、この球団もまた、野球界の「孤児」のようなものであった。


実はこの本のある章の見出し写真に、突然の解散劇の舞台となった岡山県野球場(衣笠選手の連続フルイニング出場が途切れた球場でもある)で、選手ら関係者全員で「U]のマークを形づくって撮影したものがある。

実はこの写真の球場の背後には、かつて『孤児院』と呼ばれた「養護施設(現在の呼称は「児童養護施設」)」があった~実は私はその施設に在園していたことがある。

ちょうどユニオンズが解散となる直前の2月、この養護施設は銭湯を兼ねた園児用の浴場を完成させている。戦前(1936年)に建てられた木造の園舎の前に、白塗りのきれいな建物が写っているが、それが浴場である。


それはともあれ、野球界、いや日本社会の「孤児」とさえ呼ばれた大投手スタルヒン、そして野球界の孤児ともいえよう「高橋ユニオンズ」の解散写真の背後には、本当に、孤児を収容していた「養護施設」があったというのも、何かの因縁なのかもしれない。


とはいえ、高橋ユニオンズが属していた当時のパシフィック・リーグにあった球団は今や、どこも、当時の形をとどめていない。

かつて高橋ユニオンズを葬った球団たちも皆、後にはその形を失っていった。ある球団は合併、ある球団は「身売り」・・・


永遠のものは何一つないことを、この本を通して改めて教えられた。


でも、高橋ユニオンズという球団がかつてあったことは動かぬ事実。

その球団を通して、今も、様々な形で、人と人とのつながりが生まれています。

その中の一人が、この私(昭和44年生まれなので、当然、この解散劇の時には生まれてもいません)。

もしこの球団がなかったら、確実に出会えなかったであろう、さまざまな人たちと出会えています。

そして、いい話をいくつも聞かせていただいています。


「ポンコツと呑兵衛」~私も、「ポンコツ『で』呑兵衛」でいいなら、これからもこの世で楽しく生きていける自信がつきました(実際私は、どちらの要件も満たし切って?!~苦笑~いると思う)。

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