部外者にして素人の雑記帳&旅行記

与方藤士朗

第1話 ありがとうございました!

   0

 私の住む、とある地方都市に、朝ラーメンの店ができた。

 朝まで飲んだ後の締めにも、朝起きて仕事してからの小腹満たしにもいい。

 とにかく、朝からラーメンが食える。朝6時から8時までは200円ほど安い。

 これは、行かない手はない。


 今日は、人と会う用はない。朝は2時前に起きて、4時過ぎまでひと仕事した。おかげで、短編小説が一つ仕上がった。メールチェック、といっても、不要なメールをゴミ箱に捨てるだけだが、それをすませた後、電気を切って、もう一度横になった。


   1

 朝7時過ぎ。再び目を覚ました。メールチェックという名の「清掃」を済ませ、着替えて街に。県立図書館の返却ポストに本を返し、その後すぐ、朝ラーメンの店に立寄る。いつものように、「朝煮干しそば」を頼んだ。細麺と平打ち麺があるが、平打ち麺を選ぶ。大盛にして100円増し。しばし待つと、運ばれてきた。黄金色のスープを何口かすする。うまい。一味をかける。そして、平打ち麺を箸ですくい、食す。実に、旨い。のど越しが、何とも言えぬ。細麺が悪いとは言わないが、細麺では、のど越しがもう一つだ。歯ごたえも、平打ち麺のほうがいい。血糖値が高くなっているそうだが、そんなことは気にせず、朝からラーメン。これが酒なら怒られもしようが、酒じゃないから、この後人に会うような用事があっても、特に問題は、ないでしょう。

 汁一滴も残さず、「完食」!

 レジに向かう。ワンコイン500円の100円増しで600円。


 「ありがとうございました!」

 店員に見送られ、朝ラーメンの店を立ち去った。


 自宅に戻り、ペットボトルの珈琲を飲みながら、また、パソコンに向かって仕事を始めた。夕方まで、休んだり仕事したりを繰り返した。その日は、銭湯に入って後、飲み放題のある居酒屋に行って、大ジョッキを4杯飲んだ。


   2

 今日は、久々にサウナに行ってみよう。

 朝5時から10時までの間なら、税込1080円で入れる。

 風呂場の前に設置された水飲み場の紙コップをとり、一口だけ水を飲み、まずは10分ほど、サウナに入ることにする。

 5分もすると、汗をかきだす。最初の汗は、まだ、少しばかり白く濁っている。

 10分を少し過ぎた。構わん。もう少し入っていよう。

 汗がどんどん流れる。やがて汗は、さらさらとした透明なものへと変わった。

 サウナ室を出る。

 普通ならここで水風呂と言いたいところだが、ここで、体を洗い、ひげをそる。

 さっぱりと体の汚れを汗とともに流した段階で、いよいよ、水風呂に入る。

 体調があまり良くないときはすぐに出るのだが、今日はそれなりに調子もよいので、数分間、水につかる。とろけるような感触から、やがて、体が引き締まっていくような感触に変わる。頭から水をかぶって、いったん風呂場のベンチに腰掛ける。少しずつ体が乾いていく。タオルで水滴をぬぐい、再びサウナ室へ。また、10分ぐらい入る。

 さらさらした透明な汗が、全身から噴き出していく。

 頃合いを見てサウナ室を出て、すぐ隣の水風呂へ。かけ湯ならぬかけ水をして、再び、水風呂につかる。頭から水をかぶり、少しベンチで休んだ後、今度は温湯につかる。足の血の気がよくなるのを感じる。程々温まって、その後また、水風呂へ。

 もう一度サウナ室に入って軽く汗を流し、水風呂にもう一度、少し長めに入って、頭から最後に水をかぶって、風呂場を出る。

 タオルで体をぬぐい、水分を補給して、身だしなみを整え、サウナ店を後にした。

 

 サウナを出ると、駅前の立ち飲みの店で、ビール大瓶1本を頼み、飲む。

 朝ビール、うまい。

 10時を過ぎた。朝ラーメンの店に行こう。

 10時からは、鶏ガラのスープを使った「中華そば」が始まる。

 こちらも、平打ち麺の大盛りで、800円。

 サウナでさっぱりし、ビールで景気づいた身体に、ラーメンがすいすいと入り込む。

 うまい、うまい!

 もちろん、「完食」。

 ラーメンを食べ終え、代金を払ってラーメン店を後にした。


「ありがとうございました!」


 何だか、調子が出てきた。

 そこから自転車に乗って20分ほど。大学近くのカレー屋に入った。

 カツカレー、大盛り辛口、650円。これもペロリと平らげた。


 自宅に帰り着いた。メールチェックをして、SNSもチェック。

 少しばかり小説の推敲をする。

やや疲れたので、横になって、2時間ほどゴロゴロする。

 昼過ぎに、再び起き出した。3時間ほど仕事した。

 夕方、再び、駅前の立ち飲み酒屋に行った。もう一度、大瓶のビールを飲んだ。

 その後、とある店でヱビスビールの中瓶を3本飲んだ。


   3

 日曜日。朝6時過ぎに起き出した。

 何が何でも、朝8時30分から30分間だけは、テレビの前にいなければならない。電話も、電波を切っている。しかし、電源は切らない。こちらで、裏番組のチェックを行う。

 それでも、まずは、腹ごしらえ。自転車に乗って、朝ラーメンの店に向かう。

 6時30分を少し回った頃、店に到着。

 直ちに、朝煮干しそばを頼む。もちろん今日も、平打ちの大盛り。

 それに付け加えて、たまごごはん、すなわち、卵かけご飯も注文。

 たまごごはんが先に到着。

 専用の海苔しょうゆをまずはご飯にかけ、少しくぼみを作って、そこに卵を落とす。

 箸で、しっかりかき混ぜる。泡立ち感が実に素晴らしい。

 ご飯も、卵と醤油がしっかりしみ込んで、いささか膨らむ。

 そのまま箸でひとつまみ。うまい。実に美味。

やがて、ラーメンも登場。

 こちらも、いつものようにまずはスープをすすり、その後、一味をかけて、食べる。

 このラーメン、油揚げが入っているが、これがまた、うまい。味玉が半個分入っているが、これもまた、乙なもの。だけど、トッピングで入れすぎたら、興ざめしそうだ。半分だけだからこそ、うまいのだ。まずは黄身を箸でつまんで食べる。その後、白身にはトッピングされている海苔をかけて、食べる。平打ち麺の歯ごたえとのど越しを、存分に楽しみ、煮干しスープを味わう。それと同時に、クリーミーなたまごごはんをつまむ。

 うまい、うまい、うまい、うまい!

 たまごごはんの残りを食べきり、煮干しスープの最後のイッテキを飲み干し、完食!

 レジに向かい、750円を払う。お釣りをもらう。

 ふと入り口のドアを見ると・・・


 「ありがとうございました!」


 修正マーカーのようなペンで書かれた白文字を、発見! 

 「あれ、こんなの、あった?」

 「前からありましたよ」

 と、すでに顔なじみの店員。

 「え、知らなかった・・・」

 

 「ありがとうございました!」


 今度は店員の声に見送られ、ラーメン店を後にした。

 うちに帰って、ペットボトルのアイスコーヒーをブランデーグラスに入れて飲みながら、テレビを観た。何の番組かは、私の名誉のために、申し上げないでおきます。


   4

 その翌日・月曜日。昼過ぎにその店に行った。

今日はいよいよ、消費増税前、最後の日。JRの窓口、混雑しているだろうね。国鉄時代からの風物詩だが、最近は、そういう光景が展開する機会も少なくなった。

 中華そば、平打ち麺の大盛700円。しかも、毎週月曜8時からラーメン100円引の日。待たずに座れたのは、幸い。昼過ぎにもかかわらず、店内は、ほぼ満席だった。


 JRの窓口ほどではなかったが、朝から結構、お客さんの入りがあった模様。


「ありがとうございました!」


 あの文字があったこと、うちに帰り着くまで、思い出せなかった。

 まあ、いいか。


   5

 10月1日が、ついに来た。

 朝8時少し前に朝ラーメン店に行った。

今度は、ガラガラだった。

 先客はおらず、私が帰るまで、他の客も来なかった。

 朝煮干しそば、平打ち麺の大盛650円。

 軒並み値上がりした中、大盛り100円増しだけは変わっていない。

 消費増税に伴い、今日から値上げがなされている。

 道理で、客が少ないわけだ。

 だけど、朝ラーメンは、いつものように旨かった。

 「ありがとうございました!」

 店員に見送られ、店を出て、自転車のカギを開けるとき、ふと、思い出した。


 「ありがとうございました!」


 内側のドアに書かれた、あの白文字を・・・。

 店に戻って、ドアを開けて、確認して帰りたい気もしたが・・・、

野暮なので、やめておいた。

 今度来るときは、あの文字を、しっかり見て帰ろう。

                       (2019・10・04筆)

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