したいのぼくら

武田修一

あおいろ

「ぼくらはなんにでもなれるよ」


 長い髪をなびかせながら彼女は言う。青い色彩の中、その言葉通りに、空間に溶けていきそうな彼女の手を掴む。


「ほら、」


 彼女は静かに笑う。そうして、指で、手のひらで私の顔を触る。全体を確かめるように、細部までわかるように、変えていくように、私が私でないものになるように。最後に口の端に指を持っていって、ぐいと、口角を上げるようにつり上げる。


「ふふ、だめね。あなたは擬態が下手だ」

「……こればかりはどうしようもない」

「少しずつ少しずつ、ぼくとなら大丈夫。 なんにでもなれるさ」

「そうだね」


 彼女の柔らかでなめらかな肌に触れる。

 君と一緒なら、きっと、ほんとうに、なんにでもなれるのだろう。

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