姉さんは『災星の魔女』
天宮伊佐
前段「わたしほどではないが、そこそこ偉大な読者諸君に向けてのご挨拶」
諸君。この際だから、もうはっきり言ってしまおう。
わたしは、この星で二番目に偉大な人間である。
ふざけるなとか、何を偉そうにとか、まだ世の酸いも甘いも知らない10歳の小娘が調子に乗るんじゃないとか、諸君の中には憤る者もいるだろう。
だがしかし。
残念ながら諸君、これは厳然たる事実なのである。
この赤道半径3400キロメートルの惑星に生きる、8億5000万の人類の中で、わたしは上から二番目に偉大な人間なのだ。
何を以て偉大とするかは、魂の高潔さ、溢れ出る知性、類稀なる美貌、隠そうとしても隠しきれない気品、夜中に独りでトイレへ立つ蛮勇、ピーマンも真顔で食べられる胆力などなど、幾つかの要素の総計に依る。
厳密に言うと『類稀なる美貌』だけは年齢的に発展途上であるため未だ明確な精査は出来ないが、それはまあわたしの事だから、将来はすれ違う男の9割が気絶する傾国の美女となるに違いないので、現状では誤差の範囲としておいて差し支えあるまい。
とにかく。それらを総合的かつ冷静に分析した結果、わたしがこの星で二番目に偉大な人間であるという事実は論理的に証明されている。
だが諸君。この、乾いた星に生きる諸君。
この、地表の半分以上を赤褐色の土で覆われた『
落胆しなくてもいいのだ。
泣かなくてもいいのだよ。
だって諸君にはまだ、この星で三番目に偉大な人間である可能性は残されているわけだから。
残念ながら二番目はわたしと決まっているが、その次に坐するは諸君の内の誰かなのだから。
せめてこの星で三番目に偉大な人間となるべく、諸君には日々たゆまぬ努力を続けてほしいと、わたしなんかは真に思うものである。
――えっ?
――何だって?
――一番?
それはない。諸君が一番になれる可能性だけはないのだ。
まあ、そこそこ頑張っているであろう諸君のことだから、わたしと並んで同率二位になれる可能性ならば、或いは砂粒程度に存在するかも知れない。
けど、諸君に一番は無理。むりむり絶対むり。
この星で最も偉大な人間。
最も美しい、最も賢い、最も強い、最も恐ろしい人間。
それだけは既に明確に絶対的に決まっているのだ。
諸君もこの『
――『
その人こそは、わたしの師匠にして、わたしの生涯の目標。
そして――この世で最も偉大な、わたしの姉さんに他ならない。
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