第19話 ピブルスの夕立
ドォォシイィィィンンン–––––––
体全部が、リオレギの地に伏した衝撃を風と音とで受け止めて動けないでいる中、その人はそっと静かに地上に降りたった。
「ということで、『焼き魚』ではなく『煮魚になる』が正解でした。惜しかったですね、ユシィくん。減点3です。ただし、君の発想は素晴らしいものでした」
こちらに背を向けたまま杖を頭上にかざし、その人の腕から杖までに青い魔力が集まってくるのが見えた。
「私のやり方は少しやりすぎだったようで。うまくいかないものですね。減点10です。お詫びに、皆さんのことをきれいにしておきますから」
そして青白い光が霧散すると、体の重たさが無くなって、今度は宙に浮かびそうな軽さが返ってきた。
「これで許してもらいましょう。さてさて、事後処理、事後処理」
リオレギが倒された。
あの怪魚が、いなくなった。
街を困窮させ、討伐隊をいくつも負傷させてきた相手が、この世からいなくなった。
また、戻れるのか、昔みたいな明るい街に。
「あ––…」
解放されるんだ、訳のわからない毒の恐怖から。
いつか仕留めておかなければいけない責務から。
「ぁぁあ––––」
潰れそうな胸–––。
溢れてとまらなくなった涙–––。
勝手に漏れてくる嗚咽。
「本当だ。本当なんだ。これが本当なんだ…」
悔しくて、悲しくて、嬉しくて、驚きで、虚無で、高揚して、悔しくて、不思議で、落ち着いて、混乱して、安堵して、全部が全部に混ざって混ざって、そして、
「–––りがと……、ぁりがとう、ありがとうありがとうありがとう!ありがとう!ありがとう!!あぁあ–––!!!」
そしてまた、涙しか出てこなかった。
「ふぅ–––湿っぽいのは苦手ですよ。本が濡れちゃいますからね」
その人は、苦笑しながらそう言って、翠青色の眼差しはとても優しかった。
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