第26話 殺戮獣来襲!!
「なんだ。ごちゃごちゃごちゃごちゃ、くっちゃべってねぇで、さっさと、そこのガキを殺してくれよ。オレたちは切り刻みてぇだけだからよぉ」
崖の上の蛮族の長らしき男は、しびれをきらして、地面を蹴飛ばした。
そいつは崖の上に埋まっていた『なにか』を蹴飛ばしたらしい。
ポーンと『杭』のようなものが、広場の真ん中に飛んできて、転がった。
「な、なんてことを!!!」
叫んだのはクランツェだった。
「そ、それは、この洞穴に、ワーラットを閉じこめていた『封印の楔』だったのだぞ」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……
足元がゆれるほどの地鳴り。
グォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ……
洞穴のおくから、動物の咆哮らしきものが聞こえてくる。
クランツェが洞穴のほうにむかって、剣をかまえる。
シノビ・スレーヤーたちは剣を抜くなり、おたがいに背中をあずけて、外側をむいて円陣をくむ。
盗賊たちも蛮族たちも、おのおのの武器を構えた。
突然、崖の上の土が盛りあがり、土中からワーラットが飛び出してきた。
蛮族たちは牛刀をふりまわしたが、ワーラットのぶ厚い毛がその刃をはばんだ。
ワーラットの強烈な張り手で、蛮族の頭が吹き飛んだ。
地下からワーラットが湧いて出てくる。
あっという間に崖の上に2、30匹のワーラット。
わぁぁぁぁぁ。
蛮族たちは必死で抵抗をこころみるが、人間大で剛腕のワーラットの前になすすべもない。あっという間にたたき伏せられた。
ワーラットは蛮族たちをうしろ足のカギ爪で押さえつけ、鋭い牙で食らいつきはじめた。
その惨劇を見せつけられて、盗賊たちが悲鳴をあげた。
「あぁ、もうだめだ……」
「あの数じゃアアア、勝てっこココ、ない」
「頭目、逃げるサ、はやく逃げるサ」
オォォォォォ——
洞穴から風が吹き抜けるような音——
なかからワラワラとワーラットの群れが現われた。
みるみる間に広場いっぱいに広がって、あたりを取り囲まれた。
クランツェが一匹のワーラットに斬りかかった。
ワーラットのからだから
——が、一撃では倒れない。
クランツェは続けざまに剣をふるう。三回ほど斬りつけてやっと、ワーラットはその場に崩れ落ちた。
「くっ、一撃では倒せんというのか……」
すでにクランツェは返り血をあびて、服があかく染まっている。
シノビ・スレーヤーが動いた。
人間離れした跳躍——
落下する勢いでワーラットの首を細身の刀で斬りつける。
ワーラットが首から血を噴きだしながら倒れる。が、そのうしろから別のワーラットが強烈な張り手をはなってきた。
シノビ・スレーヤーは刀を盾にして直撃をさける。
が、その受けたままの体勢で、数メルト吹き飛ばされて地面に転がった。
「ベクトールくん、わたくしはここで、こいつらを食い止める。キミたちは今すぐここを逃げてくれ!!」
ワーラットの張り手を剣で必死で押さえつけながら、クランツェが声をあげた。
「ーーって言ってるけどぉ、どーする。ベクトール?」
パケットが肩をすくめながら訊いてきた。
それをアリスが面倒くさそうに言い聞かせる。
「パケット、やっつけるしかないでしょ。ベクトールを殺しにきた連中だけ、ワーラットが襲ってくれるわけじゃないんのよ」
「ーーんだけど、あいつらを助けるのもいやだよな」
ベクトールに指さされた盗賊の頭目が、唖然としていた。
「おまえたち、なに言ってやがる。『救う?』。ワーラットのクソちから、見ただろう。だれもたすかりゃしねぇよ」
ぼくはため息をついた。
不本意きわまりないけど、ぼくらは、ぼくらを殺しにきたヤツラを助けるしかない。
「パケット、アリス。いいよ。
「だろうね。ぼくもそう思ってたンだよ」
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