第12話 異世界のチート武器取り寄せで大反撃!

 樹の皮を削っただけ——


わかっていたことだけど、この『ケンジュウ』っていうヤツは、おおきな相手や、急所を狙えない敵には……


 まったくの無力だ——


 それでも、ぼくはもういちど銃をかまえた。


 うかつだった——


 ぼくの足にツタがからまって、ぼくは中空にもちあげられた。

 手から『ケンジュウ』がすべりおちる。


 頭を下にしてぶらさがったぼくは、もうなにもできない。


『チカラを見せつけるつもりだったかね?。ニンゲン…… チカラを見せつけるとは、こういうことをいうのだ』


 巨木の精霊が邪悪な笑みをうかべると、まわりの木々がガサガサとおおきな音をたててうごきはじめた。

 やがて人間ほどもあるおおきな葉っぱの植物が、上下に葉っぱをふりはじめると、あたりで燃えていた火がどんどん消えていきはじめた。


「あぁ、ベクトール。火が、火が消えていくわ」

「くそぅ。油を使っても、燃えないのか。精霊の樹というのは」



『バカにするなよ、ニンゲン。このていどのヒなどで、われらセイレイがたおせるとおもうな。もっとツヨク、イキオイのある、あっとうてきなホノオでなければ、もやせやせんぞ』


 ぼくはかーっと頭に血がのぼった。

 おもにそれは、逆さ吊りされているから、血が頭に集まっただけだと思うけど、悔しくてしかたなかった。

 

 みんなにほめられて、ひとの役にたてて、とってもうれしくて……


 ぼくは自分の力を見あやまった。

 いや、そもそも『力』なんかなかったのに、そうかんちがいした。

 燃えさかっていた火は、燃えだしたときよりはやく鎮火しはじめていた。


 ぼくはハッとして目をみひらいた。

 ぼくの正面の5メートルほど先、すこし下のほうにアリスの姿があった。

 

 アリスは腕までぐるぐる巻きにされて、身動きできないまま枝からぶら下がっている。


 でもぼくはうごけるじゃないか——


「アリス!!!」


 ぼくは自分のからだをゆらした。

 足にからまったツタを軸にして、ブランコのようにからだをゆらす。


「ぼくはいまから、きみに抱きつく。怒らないでほしい!」


「ちょ、ちょっと、こっちは完全に自由奪われてンのよ。こんな空中でなにするワケぇぇぇぇぇぇ」

「異世界の武器を! こいつらを倒せる武器を………」



 おおきなふりこを描いて、ぼくのからだがアリスのほうへ近づいた。

 豊満な胸が目の前にせまる。

 ぼくはアリスのからだにしがみついた。


 逆さ吊りのまま抱きついたとき、ぼくの顔はアリスの股間にあった。


「ちょ、ちょっと、ど、どさくさにまぎれて、どこに顔ツッこんでンのよ」

「ア、ア、アリス。動かないで!」

 

 つられたまま暴れまくるアリスを、ぼくはぐっと抱きしめて動きをおさえた。

 アリスの豊満な胸が、ぼくのおなかにおしつけられた。


 あーー、ずっとこのままでいいかもしれない。

 ーーーじゃないっ。


 ぼくはアリスのからだにしがみついたまま、からだの向きをかえた。

 顔と顔があう。

 ちょっと頬があからんで、恥ずかしそうな顔——


 あーー、ずっとこのままでいいかも……

 じゃないって!!!


「アリス。額を貸して!」

 ぼくはアリスの額に、自分の額をかさねた。



 森が……うっそうとした森のイメージが頭に浮かぶ——

 パパパパパパ……ガガガガガガ………

 聞き慣れない音が森にこだまする。どこかでひとの争う声、悲鳴、怒号が聞こえてくる。



 そのとき、ぼくの足にからまっていたツタが、ぎゅんと勢いよくひっぱられて、ぼくはアリスからひきはがされた。

 そしてそのまま地面に叩きつけられた。


『もうヒはかんぜんにきえたぞ、ニンゲン。あっとうてきチカラ、というのはこういうのをいうのだよ。うわははははははははは……』

 巨木の高笑いが、森中にこだました。

 それにつられてまわりの樹の精霊たちが、ケタケタ、わらいはじめた。


 地面のうえ、ぼくの目の前に、金属でできたなにかがあった。

 ぼくはいつのまにか、なにかを取り寄せアポーツしていたらしい。


 背中に背負うためのストラップがついているから、たぶんリュックなのだろう。ぼくはすぐさま、そのストラップに肩をとおして背負った。


 そのリュックには、ホースのようなものが付いていて、途中に『銃』とおなじような、把手とってがついていた。

 ぼくはその把手をつかんでホースをかまえた。


『ふははははは。この後におよんで、むだなあがきをするのか?。もうヒはキえたというのにぃ?。はははははは』

【ひー、きえた。ひー、きえた、ヒヒヒヒヒ……】


 この背中にしょっているのが、なにかはわからない——

 でも、ぼくがいま、いちばん欲しかったもののはずだ。


 ぼくは指にかかった、フックをひいた。

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