津田 姫

 数時間後玲は別の小部屋に移動しいた。

「大丈夫か?」

 ベットで玲は赤ちゃんをあやしていた。

「うん、大丈夫。ありがとう心配してくれて」

 玲の隣に椅子パイプを持ってきて、赤ちゃんを見つめた。

 こうして間近を見ていると目元が玲にそっくりだ。

「ねぇ、海斗。この子を抱かしてみない」

「え!? 良いのか」

「遠慮なんて要らないわよ。この子もパパに抱っこされたいわよね」

「おぉ……」

 こうして我が子を抱くことが出来るなんて……。

「はい。首のところはしっかり抱きしめてあげてね。関節部分が固定されてないから」

「わ、わかった……」

 玲から赤ちゃんを受け取り抱きしめると意外と重たい。

 親指をツンツンと優しく突くと、握られ思うように抜けられなかった。

 意外に力が強いな。

「ウッアァァァーー!」

 するとに泣き出してしまった。

 どうしよう!?

 急いで体を撫でても一向に泣き止まなかった。

「貸してみて」

 玲に赤ちゃんを渡すとすぐに泣き止む。

「おぉ凄い……」

「まだ、慣れてないだけなのよ。ほら、カッコイイ海斗パパですよ〜〜」

 赤ちゃんをトンットンッと優しく触ってあやしていた。

「それに顔が怖いのは仕方がないものね」

 玲はニヤッと笑っている。

「ちょっと玲ママさんや。それはどうゆう意味ですかな?」

「さて、何のことかな? 全くわからないな〜〜」

「なんだと」

「きゃ、海斗パパ怖い」

 昔と同じ雰囲気のやりとりをしていたら安心でき、優しく玲の頭を撫でた。

「ありがとうな。良く頑張ってくれて本当にありがとう」

「海斗……。ありがとうそう言ってくれて」

 こんなやりとりを、娘にもやっていこうかな。

「結局、赤ちゃんの名前考えてなかった」

 こうして10カ月と長い期間があっても、色々と考えてたが決まらなかった。

「ねぇ、この子の名前どうしよっか」

「うーん。そうだな……」

 この子にとって大切な名前だからな……どうしよう。

「みのり……。さつき……。みく……。ことは?」

 名前の候補を言ってみるが、しっくり来ない。

「まだ、時間もあるし。ゆっくり決めよう海斗」

「そうだな……」

 この子の笑ってる顔を見ていると幸せになってくる。だからゆっくりと……。

「……姫」

 頭の中でその言葉がすぐに浮かび上がった。

「姫? 姫ちゃんか……」

 玲は赤ちゃんの顔を見つめて、また優しく撫でている。

「なんで姫なの?」

「この笑顔だったら、みんなから好かれる存在になる。そんな意味を込めて姫って思ったかな」

「姫か……」

 玲も新しく姫となる赤ちゃんの顔を見てるいて、いないないばーと笑わせていた。

「……姫。凄くこの子に良いと思う」

 そしてゆっくりと揺すりながら、体をトンットンッと優しく撫でる。

「あなたのお名前は姫ちゃんよ。津田 姫よ」

 すると赤ちゃんは声を上げて指先をパチパチとしていた。

「アァ! ウァー!」

「あ! 見て喜んだ」

「本当だ。良かった喜んでくれて」

 こうして姫と名付けられて良かった。

「よろしくな姫。大切な家族」

 海斗は姫の頬を優しく撫でた。

 妻の津田 玲。

 娘の津田 姫。

 そして俺がこれから支える津田 海斗。

 ……こんな素敵な家族を俺は大切にしていこう。



     終わり

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