苦くて甘い混沌

まきもの

第1話

学生時代の友達にふと言われた


「なんで毎回、森は

 手のかかる人ばっかりなん?」


「え?そうだっけ?」


今まで考えた事無かった


「歴代の恋人も好きな人も、

 守ってあげなきゃって

 盲目になり過ぎやし

 それに誰だっけ?

 今回好きになった人も

 そんな風に言ってたぞ」


まあ振られたけどねって

付け加えられたけど

よくよく考えたらグゥの音もでない


「母性本能がすごいのかしら」


って笑って誤魔化してみたけど

騙されないか心配だよって


苦笑いしか出来ない私

困り出した私を見て


「まあ程々にね」


話切り上げて友達が移動しよって言ってくれた

気を使わせてしまうけど

いつも助けられてます


もういっそ恋人だったら

安心して隣に居れそう

毎回思うけど、そこまで

甘えらんないし、それに秋くんだって

恋人いるだろうし

ん?居るとしたらダメじゃん

毎回恋愛関連は秋くんに

話してたけど

今更ながらどうしよう

あわあわ


「彼女なんていねーよ。

 いないから今ここにいんだよ」


バーカーってデコピンされた


痛みで泣いたのか安堵によるものかわからないけど


「もう…泣くしよ。用事済んだんだろ?」


私は頷く


じゃ帰るぞ


困り果てた顔しながらも、手を引っ張ってくれる



秋くんのお部屋に着くと手を離し

軽く頭をポンポンして


「適当に座ってて」


小さく返事して

ベッドに腰掛けた。ちょうどいい高さだから


秋くんは、ホットミルクココアを作ってくれた


「優しいよね、秋くん」


ため息を吐きながら、少し離れて横に座る

表情はなんか怖かったってあれデジャブ?


けど、すぐにいつもの優しい表情に戻った

なんか思わず恥ずかしくなった

何自惚れた事考えたんだよって


一瞬ニヤリと笑う表情になった


何故か恐怖を感じた


ふと机にあった秋くんのスマホが鳴る

誰かからチャットが来たようだ

見えてしまいぞっとして


「トイレ借りるね」


「どっぞー」


半ば早歩きで

たまたまポケットにスマホが入っていた

泰さん助けてって

いやけどカイさんと仮彼女になったばかりなのに

あわあわしながらスマホとにらめっこ

チャットのアイコンに

未読メッセージがあると表示されてた


【モリン夜ヒマ?カイくんや

 社長に音猫さん来るんだけど】


これなら心置きなくチャットを返せる


【絶対に行くから

 けれど誰かか迎えに来て】


位置情報を送信しました


これでよしっと


送信を終えトイレから出ようとしたら


『あの女絶対騙せますよ。

 今回なら確実に

 ボロ雑巾の用に捨てますよ

 では、五分後に』


えっ?秋くん…えっ?

ドアが開かない


『あ。わりぃみんな来るまでそこにいて

 逃げられると困るから

 あ。警察に電話したら知らないよ』


声が出なかった

体が震え出した

しばらくしてドアが開いた

数人がいた

ますます声が出なくなり

怖くてたまらない


『秋も悪い人だよなぁ。

 まあどうでもいいけどな』


数人はゲラゲラ

笑いながら取り囲む

その内の一人が私を

トイレから廊下に引っ張り出した


『袋かぶせて、服切り刻もうぜ

 どうせボロ雑巾なんだし』


怖すぎて何をされてるのか

わからなかった

体に力が入らなくていく

意識まで飛びそうになりかけた時


優しい声がした


「モリン大丈夫だよ」


泰さん来てくれたんだって

安堵して意識が飛んでだ


目覚めたら泰さんが

ウロウロ落ち着かない姿が見えた


「泰さん何してるの?」


「よっかった モリン」


泣きながら抱きついて来た


「泰さん痛い抱きしめ過ぎ」


泰さんは

ごめんよーって

いいながら更に強める


「痛いって言ってるでしょうが!!」


頭突きをくらわした


泰さんは痛いよーって

言いながらカイさんにくっつく

カイさんは呆れながら


「痛いの痛いの飛んでけ」


ってあやしてた


おかしくてたまらなかった


「あー。モリンが笑顔だよっかった」


泰さんは、

声が大き過ぎって

カイさんにチョップされてた

泰さんはむくれてた

私はおかしくてたまらなかった

口元を手で隠そうと思ったら違和感を感じた


「こんなフリフリの服持ってたっけ?」


「はーい」


飛び跳ねながら

それ僕の服可愛いでしょう?

みたいな目で見られた


思考が停止しそうになったが


「カイさんにそんな趣味が?」


「なっなっなっんで、

 僕を巻き込むんですか?

 断じてそんな

 趣味はなくわ…ないです」


一瞬部屋にいたみんなが静まり返った


「なくはないんですね?」


赤面しながら


「そっそそ、そんなことより

 飲み物足りなくなったから、

 僕行ってきます」


慌てて出て行くカイさん


「僕も行こっと」

って村上さんも出かけてった


室内に、泰さんと二人だけになってしまった


※音猫さんと高水さんは

少し遅くれるからって

まだ居なかった


ヤバみだよ〜


「モリン…ごめんね服まで守れなくて」


ポツリと呟きながら

気を失う前に着ていた服を渡された

袖が鋭利な刃物で切れ目が入っていた

血がついてないって事は

運良く袖だけ切れたって事か


「スカートは死守した」


って満面の笑みで親指立てながら言うから


「変態みたくいうなよ」


「あ。モリン呆れたね

 いつものモリンだ〜」


再び抱きつこうとするから制した


「ストップ。ちょっと疲れちゃった」


「いいよ。いいよ。寝てていいよモリン」


優しく頭を撫でてくれた泰さん

安心してすぐに眠れた


夢の中に泰さんが出てきた

謝りながらずっと泣いてる泰さん


「ごめんね守れなくてごめんね

 仲良さげだったからまさか

 ごめんねモリン」


「泣かないで泰さん…

 泰さんのせいじゃないから…

 泰さん」


聞こえていないのか反応してくれない


「泰…さん…や〜す〜さーん!!」


がばっ


「うぇい むにゃむにゃ

 モリン むにゃむにゃ」


「なんだよ…夢かってクスクス

 ありがとう泰さん。

 そしてごめんなさい

 寝床を占領してしまって」


トイレついでに起き上がり

戻って来たらむにゃむにゃ言いながら

ベッドに戻ってた

泰さん可愛な(笑)


覗き込んでたら


「にゃんだよモリン。

 まだ朝じゃないにゃん

 一緒に寝るにょだ〜」


って寝ぼけている泰さんに引っ張られた

痛かったけど騒がしくしてみんなを

起こすの悪いし

私は抱き枕なんだ

私は抱き枕なんだと

自己暗示をかけながら

じっとしていた


気がつけば朝になっていた

眠れなかった

想像以上にガッチリホールド

されて動けなかった

身動きの取れない事に焦り眠れなかった


起きて状況を把握した泰さんが叫び

みんなに怒られた事は想定内だが(笑)


想定外なのは


「モリンはいい匂いがする枕の様だった」


と、泰さんがみんなの前で発言された


魂が抜けてゆく私

音猫さんに高水さんに

説教される泰さん


けれど、これが日常

ここが、愛すべき日常

そして、この仲間といる場所が私の居場所

まもりたい場所である。


後日、自分の部屋でニュース番組見ていたら


【殺人容疑で洟秋容疑者が逮捕されました

 洟容疑者の他に数名逮捕される見通しで

 なお、洟容疑者は何件かの殺人に

 関わってみられ余罪も追及する方針です】


秋くんが⁈同級生が犯罪者?

じゃもしかして私…

フラッシュバックして

パニックになりかけた瞬間

玄関が勢いよく開き

リビングのドアも荒々しく開けて


「モリン!!大丈夫だよー

 ゆっくりゆっくりぼくを見てごらん?」


背中をさすりながら優しく優しく声をかけてくれる

恐る恐る目を開けて声のする方を見た


「泰だよ キミの好きな泰だよ」


「…つ…くつ…

 腹が立ちますよ泰さん

 ありがとうございます。

 けれど腹が立ちます」


泰さんは満面の笑みで


「モリンはそうでなくちゃ」


本当にムカつきます


「もう…」


ますます惚れてまうやろー 

って聞こえない音量で

言ったはずなのに


「うん。ボク、イケメンだからな(笑)」


無邪気な笑顔で言うな〜ムカつく〜


「あーもうムカつきます。なんなんですか?」


無邪気な笑顔のまま


「だって、モリン

 僕以外まだ怖いでしょう?

 音猫さんは仕事だがら

 たまたま僕しか居なくて

 だがら来た

 僕休みだったから」


優しさに泣きそうになった

けど泰さんには

カイさんが居るんだから

甘えちゃダメだ

また私は…


「…ダメになっちやう

 ヤダ…ヤダ…失いたくない…」


「モリン?モリンどした?

 僕は、モリンを仲間として好きだから

 居なくならないよ!!みんなだって

 お願い泣かないで」


え?泣いてる?私

ヤダ、泣きたくないヤダヤダヤダ


「泰さん、お水持って来てくれません?」


「誰?」


「あ。僕は、

 まずバイトとて

 明日から働く」



なんかゴチャゴチャうるさい

頭破れそう


「泰さん、俺の自己紹介後回しで

 とりあえずお水お願いします」


「わかった。後でちゃんと聞くわ」


「森さん、ごめんなさい

 騒がしくして。そして

 さらにごめんなさい。触れるよ」


フワッと包み込む様に手首を掴まれ

ゆっくり膝の上に手のひらをのせ

今度は優しく背中をさすってくれた


私の視界がクリアになるのを確認しながら


「森さんお水だよ」


頷き

小さく

「あっありがとうございます」


「良かった」


にこやかな表情

けど少し怖い


「あ。ごめんなさい

 そして改めて

 俺は、眞山涼よろしくお願いします」


「まやま?あー思い出した!!」


「あーもううるさい泰さん」


「だってだってだって」


子供かよ(笑)


「だって、朝社長から

 連絡あったの忘れてて」


テヘペロ


「可愛くないですよ?むしろキモいです」


私が言う前に眞山くんが言い放ってた

可笑しくて笑い出した


二人がこっち見ながら

安堵してるのがわかった

気を使わせてしまったと下を向きかけたら


「あの!!森さん、お願いがあります」


私はびっくりして顔上げた


「俺、住む家を探しているんです

 社長に話したら森さんに相談する様に

 言われたんで今日は来ました」


一言一句はっきりと発音して聞いてくる


「えっ?待ってよ…あ。一週間後に

 下の階があくけど…」


モゴモゴしながら言うと


「困ったな…明日までに

 出て行けって言われて

 23歳になっても

 実家に居座るなと親に」


ってしょぼくれて言う眞山くん

でっかい捨て犬に見えて思わず


「一週間だけ管理人室で寝るといいよ

 私は泰さんの部屋で寝るから

 泰さんは、カイさんの

 部屋に行ってください」


今度は二人共鳩が豆鉄砲を食ったような顔になり


「いやおかしいから」

「いやおかしいよ、

 僕の部屋に彼泊めるから」


同時に言ったし(笑)


あはははひひひ


「一週間、泰さんと

 同居しましょう

 誰とも折り合い合わないなら

 お部屋は別を探して」


見た目だけパフェクト

やからドキドキ?

えっ?


泰さんと眞山くんの

一週間シェアハウス生活が始まる


あれ?けどカイさん怒らないのかな?

まあカイさんの部屋に

基本的に泰さん居るぽいしな


「というか眞山くんって泰さんより歳下⁈」


「うぇー⁉︎」


「なんで泰さんまで驚くんですか?」


「なんででしょう?高水さんと同い年かと」


「見た目だけでひとの

 年齢決めつけないでください」


毎回歳上に見られるらしく

呆れた表情の眞山くん

しょぼくれて行く泰さん

なんか私もしょんぼり


「もうー病むな」


そう言われて、テヘペロってまたする泰さん

気持ち悪いと生暖かい目で見る眞山くん

そんな二人を見て可笑しくてしかなかった


不思議と眞山くんは、平気な気がしてた


「グゥー」


お腹のムシがないた(笑)


「モリンお腹空いてる?

 僕、お昼作ってたんだ

 持ってくるから食べよう

 眞山くんも」


赤面しながら頷く私

クスクス笑いながら頷く眞山くん


泰さんは一旦部屋に戻った

謎に気まずい


不意に


「森さんって…泰さん好きでしょう?」


「えっ⁈」


バレてる?初対面にバレてる?


「だってわかりやすいもん」


クスクス笑いながら言われた

なんかムカつく


「まあそんなムッとしないでよ

 口とんがらしちゃって」


その瞬間何が起きたかわからない


「余りに可愛いからキスしちゃった」


えっ?何?何?

初対面の男にキスされたの?

それなのにこの人は

無邪気な顔でいいやがるし


「ムカつく、

 歳上からかうなよ

 責任とれ」


ニヤニヤしながら


「責任とってっていくつなんだよ(笑)

 ファーストキスじゃないんだから」


「うるさい いいじゃない」


「別にいいんだけどね

 じゃあ今日からカレカノ」


あー楽しいって笑いながら言う眞山くん

タイミングよく泰さんが戻ってきたので

何も言えなくなった


「モリン顔真っ赤にして

 なんで怒ってるの?

 そんなお腹空いてたの

 ごめん気がつかなくて」


なんか違うのに


「そうなんです

 めっちゃお腹空いてる

 早く食べましょう」


お腹抱えて笑う眞山くんに

更にムカつきながら

お昼を食べ


ソファーの上で泰さんはお昼寝をしだした


眞山くんは

しーってしながらバックハグして

私の反応見ながらクスクス笑ってやがる

けど嫌な気がしない


すると耳元で


「泰さん好きなじゃないの?

 好きでもない奴に無防備で

 どうなっても知らないよ」


囁く様に言われて

パニックになり


「あんたやって好きでもない

 女に、キスやハグとかクソやないか」


「へー」


離れてくれたのかと思ったら

グイと引っ張られ

口を口で塞がれ

息継ぎする様に少し唇ずらして


「エロいあんたが悪い」


再びキスをされる

なんなの力入らなくなる

倒れない様にひっそり支えられてるし

もう何も考えらんないや


「キスしただけで、

 とろけちゃって

 本当エロい顔しやがってさ…」


どんなタイミングで起きるだよって

愕然とする眞山くん

私は、助かったって思いながら

けど頭はボーッとしたままだった


「モリン顔真っ赤だけど風邪ひいてる?」


「違う!!キ…なんでもない」


いたたまれなくなりトイレに逃げ込む


「変なモリン」


って言いながら帰っていった


「萎えたから一服してくるわ」


眞山くんはタバコ吸いに喫煙所に行った


やっと一息つける

ヘナヘナになる私


ひょんなことから恋人同士になった

眞山くんと私

けど泰さんが好きなはずなのに

あんな風にキスされたら


あーもうわけわからんー

だいたいなんなのよー

泰さんが好きなんバレてるのに

めっちゃイライラしてたら


「だって、

 森さんが言ったんじゃん

 “泰さんはカイさんの彼女

 だがら忘れなきゃ

 前に進まなきゃ”って」


「えっ?私声に出してたの?

 て言うか、眞山くんは

 最終的に捨てる気だったの?

 ぼろ雑巾の様に」


あれ苦しい

呼吸がわからない

はくってどうすればいいの?

吸うって


「うわー」


「捨てる気ない!!

 俺は、森さんと添い遂げる

 結婚するから」


眞山くんの声がどんどん遠くなる

水の中にいる感覚がする

結婚って聞こえたけど

そんなの嘘だ

もうこのままねむり…


「えーー!!けっけっ結婚⁉︎」


「ぷっどんな我のかえりかた

 なんだよけど良かった」


クスクス笑っているのに

安堵して泣いてる?


「ぶっ飛んだセリフ抜きにありがとう」


「ひでぇ渾身のプロポーズしたのに」


不貞腐れる眞山くん

パニックになる私


「まあ…一目惚れ」


「え?なんか言った?」


ポツリとなんか言ったのに聞き逃してしまい

何故、眞山くんが赤面しているのかわからない

まあいいや


「今夜は感覚しとけよ」


「(何の覚悟だ)嫌だー」


こうしてハラハラドキドキな似非カップル

が巻き起こしてゆく恋愛模様はまた次回(笑)


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